STORY SELECTION[ Vanne 咲玖 ]
出しゃばらず、足手纏いにならず
他のメンバーをよく見て知って
きちんとサポートする
それがグループにおけるリーダーの
俺の役目だと思っているから...
「咲玖たーん!僕の衣装がないー!」
「はいはい、ほら黒雨...さっき椅子にかけっぱなしにしてたでしょ
ダメだよ?大事な衣装なんだから」
「はぁい...ありがとう咲玖たん!」
「どういたしまして」
うちの...Vanneのメンバーは個性豊かだ
それぞれ我が強くて、ちょっと目を離すともう大変
俺はそれをまとめる役を貰っている
演劇ユニットVanneリーダー・咲玖(サク)
これが俺の肩書きと名前
正直、社長からリーダーに任命された時は戸惑った
この個性豊かで勝手気ままなメンバーを
果たして俺なんかがまとめられるだろうか...と
けれど意外と彼らは言えば分かってくれたし、俺がリーダーである事を良しとしてくれた
ここは、俺にとって初めての居場所になったんだ
「サックー!襲がマジギレしてんだけど!怖い!」
やれやれ、また冬羽は何をやらかしたんだか...
「怒らせたの冬羽でしょ?何したの」
「えー!俺なの?!やっぱり俺なの?!そりゃ、ちょっと襲たんが集中してたところに創作ダンスしながらにじり寄ったけどさ!」
本当に何してるんですか君は
「創作ダンスって何...」
「テーマはクリスマス!まずこうやって手をわさわさしてー...これ、ツリーを表現してんの。んで、次にキラキラーっと...これ電飾な!そしたら...」
「もういい、いいからやめて」
保育園のお遊戯会の方がクオリティ高いんじゃないかと思うような酷いダンスを見た...これは襲じゃなくてもイラッとする
「冬羽テメェ逃げてんじゃねぇよ...今日こそ首絞めてやる」
「ぎゃー!!!襲たん般若の形相!!!」
この2人は仲が良いのか悪いのか
冬羽が一方的にすり寄っているようで
実は襲も嫌じゃないんだよね
「あー、そこまで。襲ちょっと落ち着いて...あのダンスはすごくイラッとする、それはよーく分かる」
「ちょ、サックー酷くね?!」
「元凶は黙って」
「あ、ハイ...」
「襲が集中してるのにあんなイラッとする創作ダンスもどきで邪魔した冬羽が悪いね...でも首を絞めるのはいつでも出来る。今は舞台本番が控えてるからとりあえず、冬羽の謝罪で許してやって?」
「...いつでも出来る?...それもそうだな。分かった、咲玖に免じて許してやる」
「襲たぁん♡♡ありがとうそしてごめんなさい!!!サックー愛してるぅ♪」
今、首を絞めるのはいつでも出来るってところ反芻してたけど良いのか...
「咲玖たーん!!僕の髪留めが無いー!」
おっと、これはデジャヴ...しかも数分前の...オカシイナー
「黒雨くーん...さっき大事にしてって言ったでしょー」
「あれは衣装!今度は僕の私物!いいから早く探してよね」
それが人にものを頼む態度ですか
「あー......あった、ほら黒雨これ」
「僕の髪留めー!...む?」
「どうした?」
「さっきの衣装もこの髪留めも全部 咲玖たんが見つけてる...さては君、僕のもの隠して回ってるんでしょー!一緒に探すフリをして見つける事によって好感度アップでも狙ってるんですかー???」
それはあんまりだ...
あと髪留めを頬にぐりぐりするのをやめていただきたい。痛い。
「ねぇ聞いてるの?窃盗犯さーん??」
あ、なんか既に犯罪者になってる
「被害妄想もその辺にしてもらっていいですか黒雨くん...」
これみよがしに拗ねながら髪留め攻撃をやめない黒雨を取り押さえつつ
ふと楽屋の時計を確認する
「うわ!開演の時間だ!」
冬羽と襲を見ると
ちゃんと衣装に着替えてメイクも済ませ
スタンバイOKだった
「ま、やれば出来る子...だからね」
黒雨を宥めながら髪留めを付けてやり
自分の衣装とメイクの最終チェックをして皆に向き直る
「よし、準備はいいね?今日は舞台最終日...今までの稽古、公演を思い出して全力でやり切ろう!」
「「「おう!!!」」」
メンバーをまとめるのは
控えめに言っても大変だ
でも俺はそれを楽しんでる
うるさくて、手がかるこのメンバーを
Vanneという居場所を
俺もまた、愛してるんだ...