ユメウツツ

君ありて、幸福

VanneSTORY 新たな年の始まりに…

01月01日

長いようで短かった1年が終わり

新しい1年がひょっこり顔を出す

そんな元旦を楽しむVanneメンバーを

ちょっと覗き見...

 

AM5:00

まだ夜も明けきらない早朝に

着替えも済ませて準備万端なのは...

 

「さて、いざゆかんイカ焼きの旅ー」

 

Vanneのリーダー咲玖

イカ焼きに目がない彼は

毎年、元旦から神社を巡り

出店のイカ焼きを食べまくる

 

この日ばかりは黒雨が来ても冬羽が来ても相手をしない

イカ焼きは待ってくれないのだ

 

「最初は...やっぱり近場からだよな、今年もシラヤマ神社から始めますかー」

 

家から徒歩15分の神社へ向かうと

やはり人混み激しく

なかなか出店に辿り着けなかった

 

「んー、まぁここは仕方ないよね...元旦の朝だし」

 

数十分後、ようやくイカ焼きの出店に着くと

さっそく1本買って人混みから外れる

半身や足だけのイカ焼きもあるが

彼としてはやはり丸ごとでなければ邪道だ

 

「いただきます!」

 

大口でかぶりつくと

タレの甘辛さと炭火で焼いた香ばしさが口いっぱいに広がる

 

「んー!しあわせ♪」

 

普段、大人っぽく物静かな彼も

イカ焼きの前では子供のような笑顔で

声もワントーン上がる

あまりメンバーには見せたくない姿だ

 

「はぁ、美味しかった!次行きますか!」

 

持参したビニール袋に串と包み紙を入れてカバンにしまうと

次なるイカ焼きを求めて別の神社へと向かった

 

AM9:00

すっかり朝日が昇り

部屋に光が差し込み出した頃

目を覚ましたのは...

 

「ふぁー...さむっ!ひー、寒い...暖房暖房」

 

寒さに勝てず毛布を引きずりながらストーブを目指す

スイッチを入れると程なくして暖かい風が吹いてくる

 

「はー...極楽ぅ」

 

毛布にくるまりながらストーブで暖を取る彼は

事務所の看板役者でVanneのメンバー、冬羽

 

「今日は元旦かぁ...」

 

クリスマスに年越しをする彼にとって

元旦はあまり大事ではない

とはいえここは日本

嫌でも街の喧騒に惹かれる

特に彼のような祭り好きには

 

「初詣ってよく分かんねぇけど...行ってみよっかなー?ニレイニハクシュイチレイとかいう呪文唱えるんだっけ」

 

二礼二拍手一礼は呪文じゃなくて参拝方法だとツッコむ人がいない

このままだと彼は賽銭箱の前で

「ニレイニハクシュイチレイ!」と、叫ぶことになるのだが...

 

「ごめんくださーい!」

 

「はーい!はいはい...っと、あれ?黒たん?」

「いぇす、黒雨さまですよー♪

あけましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました、今年もよろしくお願いいたします」

 

ぺこっとお辞儀をして

見事な新年の挨拶をする彼は

同じVanneのメンバー、黒雨

 

黒の紋付袴に羽織という正装で

彼だけ時代を間違えたように見える

 

「えーっと、あけましておめでとうございます...てか、その格好ナニ?着物?」

「紋付袴だよー?初詣にはこの格好じゃないとね!行こ、トワたん!」

「行くってドコに?」

「人の話聞いてたー?初詣だよ!は つ も う で !」

「あ、一緒に行こうってお誘いだったりする?」

「それ以外に何があるのさ!」

 

なぜ自分のところに来たのか

他のメンバーは誘わないのか

色々と考えてみたものの

黒雨の行動に意味があったことなどないと気付いた冬羽は

急かす黒雨に言われるがまま準備をして家を出た

 

「むー...」

「黒たーん?なんでイキナリ拗ねてんのー?」

「服装がなってなーい!ジーンズって!セーターにコートって!君は初詣を舐めてるの?!?!」

「いやいや、紋付袴なんて持ってねぇよ

無茶言うなってー」

「これだから最近の若者は...」

「若者って...お前メンバーの誰より年下だからね?」

「減らず口を叩くのはこの口かっ!このっこのっ!」

「やーめーろー」

 

ぴょんぴょんと跳ねながら

唇を摘もうとする黒雨を避けつつ歩いていると

目的の神社が見えてきた

 

「うっは!めっちゃ人いる!やべー!」

 

参道の入り口からずらーっと

人の川が出来ていた

 

「黒たん迷子になるなよー」

「なったところで道は1本だから大丈夫だよ」

 

やれやれ...と、呆れ顔で先を行く黒雨に

置いていかれないように付いていく

...が、その時

 

「ストーップ!鳥居は頭下げて入ってよ!」

「え、あ、ハイ...」

 

なんの意味があるのかと思いつつ

聞いたら長くなりそうだと察知し

大人しく言われた通りにする

 

「あと人が多いからって道の真ん中歩かないでよね!」

「えっ、いや、ほとんどの人が真ん中歩いてるけど...」

「あれは無知か無礼者だから反面教師だと思って!ほら、端っこ歩く!」

「うぃっす!」

 

神社に入るだけでも色々あるんだなと半ば感心している冬羽をよそに

誰もが立ち止まりながら進む中、黒雨だけはスイスイと歩いて行く 

その後ろをはぐれないようピッタリ付いていく

 

「コンコーン♪お狐様、あけましておめでとう!今年もよろしくねぇ♪」

「...あれ石像だけど」

「なんか言った?」

「イエ、何も」

 

それからも黒雨は

御神木に手を振り、灯篭にまで話しかけ

完全な不思議ちゃん状態で参道を進んだ

 

「神様と友達とか言わねぇよな...」

 

ただのおふざけだと分かっていても

黒雨ならもしかして...と、思ってしまう

そうこうしている間に気付けば賽銭箱の前まで来ていた

 

「あれっ?」

「なぁにー?」

「いや、思ったよりすんなり着いたなぁと思って...こんな人混みの中なのにさ、5分くらいしか経ってなくねぇ?」

「僕がいるからでしょ」

 

ちょっと何言ってるかよく分からないが

まぁ、ここはスルーしておこうと決めて

早速、参拝をしようとお賽銭を出した

 

「えーっと...これ、投げればいいんだっけ?」

「投げないで静かに入れるのー賽銭箱が遠くて投げる他ないところは別だけどね」

「へぇ、知らなかった」

 

教わった通り静かにお賽銭を入れ込んで

次はどうするのかと隣の黒雨を見る

 

「二礼二拍手一礼、だよ!」

「ああ、あの呪文?ここで唱えんの?」

「...何言ってるの?」

「え?」

「えっ?」

 

その後、二礼二拍手一礼の正しい意味を知り

無事に参拝出来た冬羽は

黒雨と共に自宅へと戻ってきた

 

「いやー、まさか二礼二拍手一礼が作法とはなぁ...ビックリだったぜ」

「僕は神社で「二礼二拍手一礼!」って叫ぶと思ってた事にビックリだよ」

「デスヨネ」

 

それからしばらく神社の豆知識なんかを教わりつつ

冬羽の初めての初詣は学ぶ事の多い1日となったが

黒雨の謎は去年よりも深まったのだった

 

PM12:00

世間が初詣を終えて

昼食をどうしようかと悩んでいる頃

この男は元旦らしさの欠片もない1日を過ごしていた

 

「ニー...ニャー...」

「ん...ああシャーロット、おはよ」

「ニャーン」

 「...ほら、来い」

 

猫を抱き上げ起きてきたのは

Vanneのクール担当、襲

 

元旦をどうするかと言うよりは

彼は今日が元旦だと忘れている

冬羽と同じくクリスチャンの彼は

やはり年越しはクリスマスであり

お正月の文化には疎いのだ

 

「あ"ー...さすがに昼に起きるのはマズかったか?体ダリィ」

「ニャー?」

「お前は昼夜問わず寝てるから関係ねぇだろ」

「ニャーン」

 

まるで会話するかのように鳴くこの猫は

襲の愛猫、シャーロット

黒くてしなやかな均整の取れた躯体に

すらっと伸びる尻尾

その先には薄紫のリボンが巻かれている

 

「ニャーン!」

 

突然、襲の足に前足をかけ

シャーロットがじゃれつく

 

「あ?...メシ?」

「ニャー!」

「うるせー、ちょっと待ってろ」

 

会話するかのようにというより

本当に会話しているのかもしれない

 

襲は普段ツンデレ...どころかツンツンなのだが

この愛猫には割と甘い

口が悪いのは変わらないが

強請られるがままにおやつをあげて動物病院の先生に注意される程度には甘い

 

「ん、お前の昼メシ」

「ニャ〜ン」

 

テーブルの上に餌を置くと

シャーロットは椅子に飛び乗り

ちょこん、と座る

その反対側に襲も座ると

自分用の昼食を置き一緒に食べる

 

「...美味いか?」

「ニャー」

 

なんとも微笑ましい光景である

他のメンバーが見たらさぞ驚く事でしょう

 

「シャーロット、今日は1日オフだから...ん?」

 

急に言葉を切った襲をシャーロットが不思議そうに見つめる

 

「なんで今日オフなんだ?」

「ニャー?」

 

丸1日オフという事は少ない

しかし今日がそんな特別な日だという感覚もなく

間違っていたら面倒だと思い

スマホを開いて日付を確認する

 

「今日は...1月1日 元旦...あー、正月」

「ニャーン」

「関係ねぇな、メシ食ったらペットカフェ行くぞ...年中無休んトコならやってんだろ」

「ニャー」

 

昼食を終えて片付けを済ませると

襲はリードも持たずシャーロットと外へ出る

 

「ちょっと歩くぞ、疲れたら言え」

「ニャーン」

 

実はこのシャーロット

紐で繋がずとも襲から離れる事はない

珍しいタイプの猫である

 

颯爽と歩く襲の足元に

ピッタリとくっ付いて歩く黒猫

とてもファンタジーな絵面だ

 

やがて襲とシャーロットはペットカフェに到着

オープンテラスで静かに時間が流れるのを満喫し

また仲睦まじく帰宅した

 

そこには...

 

「あ!襲たん、シャーロットちゃん、おかえりー♪」

「おっせーよ襲ぇ♡シャーロット元気?」

「イカ焼き、食べるかい?あ、猫ちゃんにはあげられないな...ごめんね?」

 

「...シャーロット、もう1回出掛けるか」

「ニャー...」

 

もちろん黒雨と冬羽に邪魔されて出掛ける事は叶わず

そのまま襲の家で新年会が行われたのだが

それはまた、別のお話...