ユメウツツ

君ありて、幸福

二度と会えないということ

「お前は、誰かの死を目の当たりにした事はある?」

俯き、サラサラとした髪で隠れた顔を少し上げて
優しい瞳が問いかける

僕はまだ、大切な人を失った事は無い
人の死に触れたことも...

「いつか...絶対に来る、その瞬間は
言葉には代え難い
だけど、覚えておいて
二度と会えないという本当の意味を知った時、大切な人であればある程に後悔が襲ってくる」

優しい瞳は悲しみへと色を変えた

「ありがとう、愛してる、ごめんなさい...何一つ届かない悔しさと、悲しさと、やり場のない気持ちで
頭も心も身体もいっぱいになるんだよ」

きっと、既に"そんな事"を経験したのだろう
涙を堪えているせいか声は震えている

どうすればいいの?

僕は小さく聞いてみた

「会える時を大切にしなさい
伝えられる言葉はちゃんと伝えて
足りない事はあっても、過ぎる事はないから
在り来りだけど、ありがとうも愛してるもごめんなさいも
素直に伝え続けて」

「それでも、最期の時には何か心残りが生まれるものだから
大切な人には、伝え続けて...そして強く生きて、笑って空に見せて」

僕は静かに頷き、そっと手を握った

「...いい子、大好きよ
私の可愛い天の子...優しい優しい子
これからも、ずっと...」

僕も大好き
すごく愛してる
いろんな事を教えてくれた
沢山の幸せをくれた貴女
本当にありがとう...

願わくば、このまま
いつまでも...いつまでも...