襲生誕祭

「やらなくていい」

 

しかめっ面で遠慮しているのは

本日の主役、襲

 

今日は彼の誕生日という事で

冬羽を筆頭にVanneのメンバー達が

お祝いすると持ち掛けたのだが

 

「祝う気があるなら冬羽と黒雨は今日一日だけでも大人しくしててくれ

パーティーなんざ必要ねぇ」

 

この態度である

 

「襲ぇ...俺の時は盛大なドッキリ仕掛けてくれたのに

自分はパーティーすら遠慮するって言うのかよぉ」

 

巨大ステーキのオブジェに追われたことを思い出しながら抗議してみる

 

「うるせぇ、柄じゃねーんだよ分かるだろうが殴るぞ」

「ぐはっ!」

 

...と、既に殴っているのだが

 

はてさてこのまま彼は静かに誕生日を終えるのだろうか

 

 

「そうは問屋が卸さないってやつだよかさねたーん♪」

 

「あ?」

 

テレッテレッテレッテレッ

テレッテレッテレッテレッ

テレッテレッテレッテレッテレ-

 

「ぴたっごらっすいっちっ!ポチッとな」

 

黒雨が隠し持っていたスイッチを押すと

またまた床が抜け落ち

 

ない

 

「何も起こってねぇ...ぞ っ ?!」

 

不意に天井が開き

上から紙吹雪が降ってきた

 

ファサっと...ではなくドサっと

 

「...黒たーん、ちょっと量が多くない?」

 

降ってきたというよりは塊で落ちてきた大量の紙吹雪に襲は埋もれて見えない

 

「わーっ!襲!今助けるからね!」

 

ちょっとヒラヒラと降らせるだけと聞いていた咲玖が

慌てて襲を救出する

 

「...っ!殺す気かテメェ」

 

手を借りてなんとか紙吹雪の山から抜け出し

黒雨を睨みつける

 

「やーだー、紙じゃ人は死なないもーん

そんな事言うと...これも押しちゃーう!」

 

二個目のスイッチを取り出し

有無を言わせず押す

 

次に襲を襲ったのは...

 

「イッテェ!!!」

 

壁が開き飛んできたのはバスケットボール

これまた大量である

投げているのは見覚えのない人達

 

「なんだアイツら!誰だよ!つーかイテェ!」

 

彼らは事務所と契約しているエキストラの方々

黒雨に脅さr...頼まれて待機していたのだ

 

「襲たんバスケ好きでしょー?」

 

安全な場所に隠れ、呑気な声で叫んでいる

 

「ふっざけんな!バスケが好きだからってボールぶつけられて嬉しいワケねぇだろ!」

 

ようやく止んだボールの嵐に安堵し

息を切らせながら黒雨の元へ行き追いかけ回す

 

「きゃはははは!こわーい!」

 

するとまた、新しいスイッチを取り出した

 

「これで最後だよー♪ポチッとなーん♪」

 

スイッチが押されたと同時に立ち止まり

辺りを警戒する

 

~♪

Happy Birthday To you

Happy Birthday To you

Happy Birthday Dear かさね〜

Happy Birthday To you

 

どこからともなく音楽が流れ

いつの間にか楽屋から出ていた咲玖がケーキを持って登場した

 

「...お誕生日おめでとう襲

君が生まれてきてくれたこと、俺は本当に嬉しいよ

だから少しだけ、お祝いさせてね」

 

微笑みながら、けれど申し訳なさそうに

ケーキを差し出された

 

「別に...絶対に祝うなとは言ってねぇよ」

 

添えられていたフォークを手に取ると

苺を刺して食べる

 

「「いやっほーい!Happy Birthday襲たーん!」」

 

様子を見ていた冬羽と黒雨が駆け寄る

 

「テメェらには祝われたくねぇから帰れ」

 

抱きつこうとした彼らをサッと避けると

ついでに冬羽を蹴った

 

「いった!なんで俺だけ?!」

 

「やーい蹴られてやんのートワたんマヌケー♪」

 

キャーキャー騒ぐ二人を他所に

襲はケーキを食べ続けた

 

「かーさね、また来年も一緒にお祝いさせてね?」

 

黙々とケーキを食べる襲に咲玖がコソッとお願いする

 

「...まぁ、美味いケーキが食えるなら

多少は付き合ってやるよ」

 

未だ騒いでいる馬鹿二人と

少し遠慮が過ぎるお人好しと

この空間と、時間と、ケーキ

 

彼は案外、こういうのが嫌いではないのだ。