ユメウツツ

君ありて、幸福

STORY SELECTION[ Vanne 襲 ]

襲 白(カサネ シロ)
事務所イチ難読な名前らしい
まぁ、よくシュウって読み間違えられるが...それだとマネージャーの染井サンと同じになるから
襲と書いてカサネ...覚えてくれ
俺の名前だ

仕事はVanneって演劇ユニットで役者をやってる
たまにモデルとか、歌手みたいな真似もするが、基本的には役者だ

なんでこの仕事してんのかって言うと
社長にしつこくスカウトされたから
としか答えようがねぇんだけど

元々、表現する仕事には興味あったから
それなりに天職だと思ってる

それに...

「かぁさぁねぇたぁん♡♡」

「いつにも増して気持ち悪い呼び方すんなバカ冬羽」

「やーん、聞いてよぉ...黒たんが俺の事いじめるー」

「知るか」

「あなたっていつもそう!あたしの話なんて聞いてくれない!どうせあたしは二番目の女よ!」

「...なんだその寸劇
絶対ノらねぇからな」

このうるさいのは同じ演劇ユニットのメンバー、冬羽
何かと俺に話しかけてくる
かなり鬱陶しいが
コイツといると退屈はしない

「どきなさいっ!この泥棒猫ぉ!襲はわたくしの旦那でしてよ!」

...なんか増えた

「んまっ!襲はあたしを愛してるのよ!さっさと離婚しなさいよ!」

「なんですって?!」

冬羽のくだらねぇ寸劇にノリノリで入って来たのは黒雨
同じVanneのメンバーだ
コイツも、一緒にいて退屈はしない
ただ冬羽と同じくらいうるさい

キーキー言いながら騒いでいる
妻VS不倫相手の寸劇を眺めて
俺が思う事はひとつ

「お前ら本当に馬鹿だな」

「「あなたはどっちを選ぶのよ!?」」

どっちも選ばねぇよ...

「ほーら、冬羽に黒雨
そろそろ帰るよ?準備して」

「「うぃ!」」

「...咲玖」

「いつも大変だね襲、あの2人に囲まれちゃって」

微笑ましいと言いたげな顔で
隣に座ったのは咲玖
Vanneのリーダー...
この人は、落ち着く
俺の事をよく知っていて
言葉選びが上手くて
少しだけ、素直になれる

「あの馬鹿2人なんとかしてくれ」

「嫌い?...じゃあ社長に言って辞めさせよっかー」

「は?いや、そうじゃなくて...なんつーか」

「ふふ、冗談。襲は言葉こそツンツンしてるけど...存外、皆と一緒の時間が好きでしょ?」

「...嫌い、では、ないってだけだ」

「知ってる...大丈夫、2人もちゃんと分かってる。冬羽も黒雨も本当に好かれてないと察したら近付かない子だ
囲まれるのは、襲の好きも伝わってるからだよ」

「だっ...から、嫌いじゃねぇだけだって...」

「はいはい、襲は難儀な子だなー
さて...俺らも帰ろう?一緒に」

「...ああ」

全部、全部 咲玖の言う通りだ
俺は存外コイツらとの時間が嫌いじゃないのに
素直さに欠けてて、オマケに口が悪い

だけど

そんな俺の"本当のところ"を
察して、笑わないで、受け入れてくれる

このメンバーと出会えて良かった

そんな言葉、キャラじゃねぇから
絶対に言えはしないけれど

いつも思っている...心の底から








「言ってくれてもいいんだぜ襲たん♡♡」
「そーだよ襲たんっ♪」

「今一瞬マジで殺意沸いたんだが、受け取るか?...人の心を読むんじゃねぇ馬鹿共!!」

「「きゃー!おゆるしぃ♡♡」」

「懲りないね、2人とも...」