STORY SELECTION [ Vanne 冬羽 ]

わりと普通の家庭に産まれて
一人息子だったからか大切に育てられ
他より見目が良かったから
気が付けばティーン雑誌のモデルをしていた

そこから今の事務所に移籍して
役者を始めたところ
そこそこ人気が出て現在に至る

mizunowater事務所の看板役者
冬羽(トウワ)...俺の事ね。

自分で言うのも図々しいけど
俺は人当たりがいいし世渡り上手だ
仲間にはウザイなんて言われることもあるけど、それも友情の成せる技みたいなもので...

「なぁなぁ襲たーん♡」

「"たん"を付けるな"♡"もやめろ気持ち悪い」

「やーん襲たんったら照れちゃって!」

「人の話を聞け!」

同じ事務所の同期で一番愛想の無いこの襲 白(カサネ シロ)すら
口では嫌がりつつ俺の方に向き直って相手してくれる

これ、俺の特権だと思うんだよね

「それで?話は?」

「ああ、俺さぁ マジで人好きになったことねぇの...てか 好きってナニ?みたいな?
襲たんは人を好きになるってなんだと思うー?」

「はぁ?お前 何年生きてんだ
イマドキ小学生でも恋愛感情くらい分かるぞ」

「うっそ?!やだ俺すげぇピュア!!」

「違ぇだろ 馬鹿なんだろ」

「なんだよー、そういう襲たんは知ってんのかよコイゴコロ

「人並みには分かる」

マジかぁ...この襲にも恋心はあるのかぁ
俺ってば心が欠けてるのかしら

なんでも小学生の頃、俺が通ってた学校では1クラスにつき3組はカップルがいたらしい
さらに中学生の頃は5組
高校生にもなればクラス中が恋、恋、恋

俺はそんな中で一度もコイビトなんて
甘い存在、出来たことがなかった

「告白はされた事あんだろ?」

「そりゃ、あるよ?俺イケメンだもーん...でも 女の子って可愛いけど怖いじゃん?付き合ったら日に日にそんな裏の顔が見えてくるのかと思うとゾッとするからさー」

「自信と偏見ヒデェなお前...恋なんて一生 知らずにいろ
世の女のためにも」

「この業界それなりに自信がなきゃやってけませーん
襲たんだって自分の顔が悪いとは思ってないくせにー
っつーか!女の子が怖いのはマジだから!怒らせたら地獄だから!」

「まぁ...な、自分で自分を卑下したらファンに申し訳ねぇからな
それにしても...恋した事もねぇのに女を怒らせた事はあんのか」

「告白された時に"ごめん、君には魅力が無い"って言ったら往復ビンタ食らった...昼間だったのに星が見えたぜ...フッ」

「最低な自業自得じゃねぇか」

「いやいや、俺には君の魅力が分からないって意味だったんだけどー・・・ん?やっぱり酷いかな」

「なんとも言えねぇ...」

だって、本当に分からなかった
その子は確かに可愛い顔だったし
声も静かで服のセンスも良くて
けれど、ただそれだけだった

噂に聞くビビっとくるものとか
心がキュンとするとか
そんなもの感じなかった
だから 断ったんだ

「俺ってもしかしてホモ?男が好きってやつ??」

「心当たりでもあんのかよ」

「んー?ねぇよー?でもさぁ、女の子よりか男の方が同性だし...一緒にいて楽だとは思う」

「それは友情だろ」

「うーん...でも俺、襲たんとキス出来るよ?したことないけど、多分 女の子にするより抵抗ない」

「バーカ、根本が違ぇよ
"キスできる"じゃなくて"キスしたい"が恋
お前のは恋じゃなくてゲーム」

「じゃあ、したい
しよーぜ襲たーん♡」

「ふっざけんな!誰がするか!」

「ぐふっ!!!」

冗談なのに本気の蹴りを食らった
襲のこういうところが好き
遊びとか、ノリで一線を越えたりしない
硬派なところ

でも、この好きも所謂
友情なんだろう

俺は不安定なところにいて
男だから女が好きとか
男だけど男が好きとか
女になりたいとか
男らしくいたいとか
そんな風に自分を属したい場所が
どこにもない状態で

ただ人間が好きで
生きているものが愛おしくて
人と関わっていたくて

これから先も きっと
誰か一人を愛したりしない
そんな気がしている...








「...ん?なぁ、襲たん!俺がマジで恋を知って その相手が襲たんだったらお前は本気で考えてくれんの?」

「言っとくが俺はノーマルだからな!
でも...まぁ、お前が本気で俺に恋した時にはちゃんと向き合ってやるよ
どんな答えになるかは分からねぇけどな」

「......あ、今ちょっと襲に惚れた音がしたかもしんない
ねぇ、これ恋?恋じゃね??」

「やめろ馬鹿!寄ってくんな!」

「向き合ってくれんだろー???」

「顔がニヤけてんだよ!てめぇふざけてんだろ!」

「えー?本気かもよー?」

...ずっと、このままでいい
恋なんて知らなくても
俺はその辺の恋人達より幸せだ