ユメウツツ

君ありて、幸福

VanneSTORY 新たな年の始まりに…

01月01日

長いようで短かった1年が終わり

新しい1年がひょっこり顔を出す

そんな元旦を楽しむVanneメンバーを

ちょっと覗き見...

 

AM5:00

まだ夜も明けきらない早朝に

着替えも済ませて準備万端なのは...

 

「さて、いざゆかんイカ焼きの旅ー」

 

Vanneのリーダー咲玖

イカ焼きに目がない彼は

毎年、元旦から神社を巡り

出店のイカ焼きを食べまくる

 

この日ばかりは黒雨が来ても冬羽が来ても相手をしない

イカ焼きは待ってくれないのだ

 

「最初は...やっぱり近場からだよな、今年もシラヤマ神社から始めますかー」

 

家から徒歩15分の神社へ向かうと

やはり人混み激しく

なかなか出店に辿り着けなかった

 

「んー、まぁここは仕方ないよね...元旦の朝だし」

 

数十分後、ようやくイカ焼きの出店に着くと

さっそく1本買って人混みから外れる

半身や足だけのイカ焼きもあるが

彼としてはやはり丸ごとでなければ邪道だ

 

「いただきます!」

 

大口でかぶりつくと

タレの甘辛さと炭火で焼いた香ばしさが口いっぱいに広がる

 

「んー!しあわせ♪」

 

普段、大人っぽく物静かな彼も

イカ焼きの前では子供のような笑顔で

声もワントーン上がる

あまりメンバーには見せたくない姿だ

 

「はぁ、美味しかった!次行きますか!」

 

持参したビニール袋に串と包み紙を入れてカバンにしまうと

次なるイカ焼きを求めて別の神社へと向かった

 

AM9:00

すっかり朝日が昇り

部屋に光が差し込み出した頃

目を覚ましたのは...

 

「ふぁー...さむっ!ひー、寒い...暖房暖房」

 

寒さに勝てず毛布を引きずりながらストーブを目指す

スイッチを入れると程なくして暖かい風が吹いてくる

 

「はー...極楽ぅ」

 

毛布にくるまりながらストーブで暖を取る彼は

事務所の看板役者でVanneのメンバー、冬羽

 

「今日は元旦かぁ...」

 

クリスマスに年越しをする彼にとって

元旦はあまり大事ではない

とはいえここは日本

嫌でも街の喧騒に惹かれる

特に彼のような祭り好きには

 

「初詣ってよく分かんねぇけど...行ってみよっかなー?ニレイニハクシュイチレイとかいう呪文唱えるんだっけ」

 

二礼二拍手一礼は呪文じゃなくて参拝方法だとツッコむ人がいない

このままだと彼は賽銭箱の前で

「ニレイニハクシュイチレイ!」と、叫ぶことになるのだが...

 

「ごめんくださーい!」

 

「はーい!はいはい...っと、あれ?黒たん?」

「いぇす、黒雨さまですよー♪

あけましておめでとうございます。昨年は大変お世話になりました、今年もよろしくお願いいたします」

 

ぺこっとお辞儀をして

見事な新年の挨拶をする彼は

同じVanneのメンバー、黒雨

 

黒の紋付袴に羽織という正装で

彼だけ時代を間違えたように見える

 

「えーっと、あけましておめでとうございます...てか、その格好ナニ?着物?」

「紋付袴だよー?初詣にはこの格好じゃないとね!行こ、トワたん!」

「行くってドコに?」

「人の話聞いてたー?初詣だよ!は つ も う で !」

「あ、一緒に行こうってお誘いだったりする?」

「それ以外に何があるのさ!」

 

なぜ自分のところに来たのか

他のメンバーは誘わないのか

色々と考えてみたものの

黒雨の行動に意味があったことなどないと気付いた冬羽は

急かす黒雨に言われるがまま準備をして家を出た

 

「むー...」

「黒たーん?なんでイキナリ拗ねてんのー?」

「服装がなってなーい!ジーンズって!セーターにコートって!君は初詣を舐めてるの?!?!」

「いやいや、紋付袴なんて持ってねぇよ

無茶言うなってー」

「これだから最近の若者は...」

「若者って...お前メンバーの誰より年下だからね?」

「減らず口を叩くのはこの口かっ!このっこのっ!」

「やーめーろー」

 

ぴょんぴょんと跳ねながら

唇を摘もうとする黒雨を避けつつ歩いていると

目的の神社が見えてきた

 

「うっは!めっちゃ人いる!やべー!」

 

参道の入り口からずらーっと

人の川が出来ていた

 

「黒たん迷子になるなよー」

「なったところで道は1本だから大丈夫だよ」

 

やれやれ...と、呆れ顔で先を行く黒雨に

置いていかれないように付いていく

...が、その時

 

「ストーップ!鳥居は頭下げて入ってよ!」

「え、あ、ハイ...」

 

なんの意味があるのかと思いつつ

聞いたら長くなりそうだと察知し

大人しく言われた通りにする

 

「あと人が多いからって道の真ん中歩かないでよね!」

「えっ、いや、ほとんどの人が真ん中歩いてるけど...」

「あれは無知か無礼者だから反面教師だと思って!ほら、端っこ歩く!」

「うぃっす!」

 

神社に入るだけでも色々あるんだなと半ば感心している冬羽をよそに

誰もが立ち止まりながら進む中、黒雨だけはスイスイと歩いて行く 

その後ろをはぐれないようピッタリ付いていく

 

「コンコーン♪お狐様、あけましておめでとう!今年もよろしくねぇ♪」

「...あれ石像だけど」

「なんか言った?」

「イエ、何も」

 

それからも黒雨は

御神木に手を振り、灯篭にまで話しかけ

完全な不思議ちゃん状態で参道を進んだ

 

「神様と友達とか言わねぇよな...」

 

ただのおふざけだと分かっていても

黒雨ならもしかして...と、思ってしまう

そうこうしている間に気付けば賽銭箱の前まで来ていた

 

「あれっ?」

「なぁにー?」

「いや、思ったよりすんなり着いたなぁと思って...こんな人混みの中なのにさ、5分くらいしか経ってなくねぇ?」

「僕がいるからでしょ」

 

ちょっと何言ってるかよく分からないが

まぁ、ここはスルーしておこうと決めて

早速、参拝をしようとお賽銭を出した

 

「えーっと...これ、投げればいいんだっけ?」

「投げないで静かに入れるのー賽銭箱が遠くて投げる他ないところは別だけどね」

「へぇ、知らなかった」

 

教わった通り静かにお賽銭を入れ込んで

次はどうするのかと隣の黒雨を見る

 

「二礼二拍手一礼、だよ!」

「ああ、あの呪文?ここで唱えんの?」

「...何言ってるの?」

「え?」

「えっ?」

 

その後、二礼二拍手一礼の正しい意味を知り

無事に参拝出来た冬羽は

黒雨と共に自宅へと戻ってきた

 

「いやー、まさか二礼二拍手一礼が作法とはなぁ...ビックリだったぜ」

「僕は神社で「二礼二拍手一礼!」って叫ぶと思ってた事にビックリだよ」

「デスヨネ」

 

それからしばらく神社の豆知識なんかを教わりつつ

冬羽の初めての初詣は学ぶ事の多い1日となったが

黒雨の謎は去年よりも深まったのだった

 

PM12:00

世間が初詣を終えて

昼食をどうしようかと悩んでいる頃

この男は元旦らしさの欠片もない1日を過ごしていた

 

「ニー...ニャー...」

「ん...ああシャーロット、おはよ」

「ニャーン」

 「...ほら、来い」

 

猫を抱き上げ起きてきたのは

Vanneのクール担当、襲

 

元旦をどうするかと言うよりは

彼は今日が元旦だと忘れている

冬羽と同じくクリスチャンの彼は

やはり年越しはクリスマスであり

お正月の文化には疎いのだ

 

「あ"ー...さすがに昼に起きるのはマズかったか?体ダリィ」

「ニャー?」

「お前は昼夜問わず寝てるから関係ねぇだろ」

「ニャーン」

 

まるで会話するかのように鳴くこの猫は

襲の愛猫、シャーロット

黒くてしなやかな均整の取れた躯体に

すらっと伸びる尻尾

その先には薄紫のリボンが巻かれている

 

「ニャーン!」

 

突然、襲の足に前足をかけ

シャーロットがじゃれつく

 

「あ?...メシ?」

「ニャー!」

「うるせー、ちょっと待ってろ」

 

会話するかのようにというより

本当に会話しているのかもしれない

 

襲は普段ツンデレ...どころかツンツンなのだが

この愛猫には割と甘い

口が悪いのは変わらないが

強請られるがままにおやつをあげて動物病院の先生に注意される程度には甘い

 

「ん、お前の昼メシ」

「ニャ〜ン」

 

テーブルの上に餌を置くと

シャーロットは椅子に飛び乗り

ちょこん、と座る

その反対側に襲も座ると

自分用の昼食を置き一緒に食べる

 

「...美味いか?」

「ニャー」

 

なんとも微笑ましい光景である

他のメンバーが見たらさぞ驚く事でしょう

 

「シャーロット、今日は1日オフだから...ん?」

 

急に言葉を切った襲をシャーロットが不思議そうに見つめる

 

「なんで今日オフなんだ?」

「ニャー?」

 

丸1日オフという事は少ない

しかし今日がそんな特別な日だという感覚もなく

間違っていたら面倒だと思い

スマホを開いて日付を確認する

 

「今日は...1月1日 元旦...あー、正月」

「ニャーン」

「関係ねぇな、メシ食ったらペットカフェ行くぞ...年中無休んトコならやってんだろ」

「ニャー」

 

昼食を終えて片付けを済ませると

襲はリードも持たずシャーロットと外へ出る

 

「ちょっと歩くぞ、疲れたら言え」

「ニャーン」

 

実はこのシャーロット

紐で繋がずとも襲から離れる事はない

珍しいタイプの猫である

 

颯爽と歩く襲の足元に

ピッタリとくっ付いて歩く黒猫

とてもファンタジーな絵面だ

 

やがて襲とシャーロットはペットカフェに到着

オープンテラスで静かに時間が流れるのを満喫し

また仲睦まじく帰宅した

 

そこには...

 

「あ!襲たん、シャーロットちゃん、おかえりー♪」

「おっせーよ襲ぇ♡シャーロット元気?」

「イカ焼き、食べるかい?あ、猫ちゃんにはあげられないな...ごめんね?」

 

「...シャーロット、もう1回出掛けるか」

「ニャー...」

 

もちろん黒雨と冬羽に邪魔されて出掛ける事は叶わず

そのまま襲の家で新年会が行われたのだが

それはまた、別のお話...

VanneSTORY たのしいクリスマス


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「じんぐるべーじんぐるべー♪すっずーがーなるー♪」

「らんらんらーららんらんらんらんホニャララ…へいっ!」

 

「分からねぇなら歌うな馬鹿共」

「俺は分かってたからね?!」

「僕も分かってた!」

 

「「それは嘘だろ」」

 

「はーい、お待たせ皆ー

ケーキだよー」

 

外は雪、事務所の会議室にはクリスマスツリーがキラキラと輝いて

壁を覆い尽くす程のオーナメント達は

空気の流れに身を委ねて揺れている

 

今日はクリスマスイヴ

 

皆で過ごすたのしいクリスマスだ

 

「はいっ!僕イチゴのところがいい!」

 

「どこを切ってもイチゴたっぷりだから大丈夫だよ」

 

会議室を貸し切ってクリスマスパーティーをしようと言い出したのは冬羽だった

Vanneのメンバー全員で集まってのパーティーは初めてだったけれど

どこか懐かしいような、ずっと昔から恒例だったような不思議な気持ちで

ソワソワしながらこの時を待っていた

 

「おい冬羽ちょっと腕上げろ」

「えっ、なに?襲たん」

「袖…コップに入ってんだよ」

「わーっ!!ジュースがあああ!!袖があああ!!」

「うるせぇ!!」

 

まぁね、静かにゆっくり過ごせるパーティーなんて望んではいなかったんだけど

うん、そうだね、これがVanneらしい

 

でも…もう少し…

 

「落ち着いたパーティーが良かった…なぁ…」

「サクたん何か言った?」

「何でもないよ黒雨…ほら、ケーキどうぞ」

「わーい!いただきまーす!」

 

「あっ!黒雨ばっかズリぃ!咲玖たぁん俺もケーキー…」

「はいはい、冬羽と…襲の分もね」

「ああ、サンキュー」

 

「さーーくーー!!イチゴ追加ー!」

「いや、追加ってなに?無いよそんなの…って、なんで綺麗にイチゴだけ食べてるんですか黒雨くーん」

「えー、君スポンジと生クリームはイチゴを乗せるための土台だって習わなかったの?うわー、教育がなってなーい」

 

そんな教育聞いたことなーい…

 

「黒雨、たまには大人しくしろ…俺がイチゴやるから」

「襲たんっ!僕は君の優しさを明日まで忘れないよっ!」

「どっかで聞いたようなセリフだな…」

 

「へいっ!へいっサックー!咲玖もケーキ食えよ!」

「ん?あ、切り分けてくれたの?ありがとう冬羽、いただきます」

 

自分がケーキを食べるのは半ば諦めてたけど、襲と冬羽は優しいなぁ

黒雨も見習ってくれないかなぁ…

 

「あっ!咲玖たん今ちょっと失礼なこと考えてるでしょー!」

「っっ!な、何も考えてない…考えてないよ黒雨…」

「僕だって思いやりくらいあるんだからねー?ほらー!ほらほらー!」

「ちょっ、やめ…なんでフォークでつつくの?!思いやりはどうしたの?!」

「思い槍…ってね」

 

えー…

 

「ははっ、フォークは槍じゃなくて矛だろー」

「あー、そっかぁ」

 

そこじゃない、そこじゃないよ冬羽…

 

 「…あれ、襲どうかした?ケーキあんまり食べてないみたいだけど」

「いや、咲玖お前さ…俺らとクリスマスなんて過ごさねぇ方が気楽だったんじゃねえか」

「ええ?急にどうしたの」

「黒雨はうるせぇし、冬羽は馬鹿だろ…俺だって結局お前に全部任せきりで…疲れるだけじゃねぇ?」

 

「そんな事、考えてたの…襲もなかなかおバカさんだね」

「あ?」

「俺は楽しいよ…今日が皆でやる初めてのクリスマスパーティーなはずなのに、ずっと昔からやってきた事のような感じがするんだ…おかしいよね、ふふ」

 

「それ俺もー!」

「冬羽…」

「僕も~♪初めてって感じしなーい」

「黒雨まで?」

「そうだな、俺も毎年の事で慣れてる気がする」

「ええー?皆そうだったの?

もしかしたら俺達、前世でもこうやって仲良くパーティーしてたのかな…そうだとしたら、素敵な運命だよね」

 

「「「……」」」

 

「こういう時だけ黙らないでよ…恥ずかしい事言った自覚はあるよ」

 

「ほんっと恥っずかしいー!咲玖たん恥ずかしいー!」

「前世でもパーティーしてたのかな…素敵な運命だよね」

「やめて、繰り返さないで冬羽くーん!」

「咲玖…ちょっとかける言葉がねぇけど…なんつーか、気にすんな」

「妙な優しさ出さないでー…いっそ気持ち悪いとか言ってー…」

 

「でもさぁ、運命とか気恥しいけど

俺らには無いとも言い切れねぇよな!」

「わかるぅ、だってミジンコの頃から知ってる気がするしー」

「え、皆ミジンコから始まってるの?人の子じゃないの?」

「人の子だろ、そこは自信持てよ」

 

「来年もパーティーしようぜ!皆で集まってさ!」

「さんせーい!今度はイチゴの追加用意しておいてよね!」

「だからその教育は間違ってるから」

「来年はもっと静かに過ごしてぇけどな…」

 

 

初めて皆で過ごしたクリスマスは

いつもの賑やかさに、甘いケーキ、大変だけど楽しい時間が流れて

あっという間に日付けが変わっていた

 

「んじゃ、あれ言っときますかー!」

「フライングしちゃダメだよ咲玖たん!」

「なんで俺だけに言うの??」

「クラッカー持てよー」

 

「準備はいい?せーのっ…」

 

「「「「Merry Christmas!」」」」

 

パーンっと豪快な音を立てて

クラッカーから優しい色が溢れ出す

今日はきっといい夢が見られる

賑やかで、楽しい夢

そして後悔のない明日がやってくる

Vanneの新しい一年が始まる…

 

 

 

 

 

「A happy new year★良いお年を!」

仏教の人はまだだけどね」

「余計な事言わないのー」

「来年もよろしくな…」

STORY SELECTION[ Vanne 襲 ]

襲 白(カサネ シロ)
事務所イチ難読な名前らしい
まぁ、よくシュウって読み間違えられるが...それだとマネージャーの染井サンと同じになるから
襲と書いてカサネ...覚えてくれ
俺の名前だ

仕事はVanneって演劇ユニットで役者をやってる
たまにモデルとか、歌手みたいな真似もするが、基本的には役者だ

なんでこの仕事してんのかって言うと
社長にしつこくスカウトされたから
としか答えようがねぇんだけど

元々、表現する仕事には興味あったから
それなりに天職だと思ってる

それに...

「かぁさぁねぇたぁん♡♡」

「いつにも増して気持ち悪い呼び方すんなバカ冬羽」

「やーん、聞いてよぉ...黒たんが俺の事いじめるー」

「知るか」

「あなたっていつもそう!あたしの話なんて聞いてくれない!どうせあたしは二番目の女よ!」

「...なんだその寸劇
絶対ノらねぇからな」

このうるさいのは同じ演劇ユニットのメンバー、冬羽
何かと俺に話しかけてくる
かなり鬱陶しいが
コイツといると退屈はしない

「どきなさいっ!この泥棒猫ぉ!襲はわたくしの旦那でしてよ!」

...なんか増えた

「んまっ!襲はあたしを愛してるのよ!さっさと離婚しなさいよ!」

「なんですって?!」

冬羽のくだらねぇ寸劇にノリノリで入って来たのは黒雨
同じVanneのメンバーだ
コイツも、一緒にいて退屈はしない
ただ冬羽と同じくらいうるさい

キーキー言いながら騒いでいる
妻VS不倫相手の寸劇を眺めて
俺が思う事はひとつ

「お前ら本当に馬鹿だな」

「「あなたはどっちを選ぶのよ!?」」

どっちも選ばねぇよ...

「ほーら、冬羽に黒雨
そろそろ帰るよ?準備して」

「「うぃ!」」

「...咲玖」

「いつも大変だね襲、あの2人に囲まれちゃって」

微笑ましいと言いたげな顔で
隣に座ったのは咲玖
Vanneのリーダー...
この人は、落ち着く
俺の事をよく知っていて
言葉選びが上手くて
少しだけ、素直になれる

「あの馬鹿2人なんとかしてくれ」

「嫌い?...じゃあ社長に言って辞めさせよっかー」

「は?いや、そうじゃなくて...なんつーか」

「ふふ、冗談。襲は言葉こそツンツンしてるけど...存外、皆と一緒の時間が好きでしょ?」

「...嫌い、では、ないってだけだ」

「知ってる...大丈夫、2人もちゃんと分かってる。冬羽も黒雨も本当に好かれてないと察したら近付かない子だ
囲まれるのは、襲の好きも伝わってるからだよ」

「だっ...から、嫌いじゃねぇだけだって...」

「はいはい、襲は難儀な子だなー
さて...俺らも帰ろう?一緒に」

「...ああ」

全部、全部 咲玖の言う通りだ
俺は存外コイツらとの時間が嫌いじゃないのに
素直さに欠けてて、オマケに口が悪い

だけど

そんな俺の"本当のところ"を
察して、笑わないで、受け入れてくれる

このメンバーと出会えて良かった

そんな言葉、キャラじゃねぇから
絶対に言えはしないけれど

いつも思っている...心の底から








「言ってくれてもいいんだぜ襲たん♡♡」
「そーだよ襲たんっ♪」

「今一瞬マジで殺意沸いたんだが、受け取るか?...人の心を読むんじゃねぇ馬鹿共!!」

「「きゃー!おゆるしぃ♡♡」」

「懲りないね、2人とも...」

STORY SELECTION[ Vanne 咲玖 ]

出しゃばらず、足手纏いにならず
他のメンバーをよく見て知って
きちんとサポートする

それがグループにおけるリーダーの
俺の役目だと思っているから...

「咲玖たーん!僕の衣装がないー!」

「はいはい、ほら黒雨...さっき椅子にかけっぱなしにしてたでしょ
ダメだよ?大事な衣装なんだから」

「はぁい...ありがとう咲玖たん!」

「どういたしまして」

うちの...Vanneのメンバーは個性豊かだ
それぞれ我が強くて、ちょっと目を離すともう大変
俺はそれをまとめる役を貰っている

演劇ユニットVanneリーダー・咲玖(サク)

これが俺の肩書きと名前

正直、社長からリーダーに任命された時は戸惑った
この個性豊かで勝手気ままなメンバーを
果たして俺なんかがまとめられるだろうか...と

けれど意外と彼らは言えば分かってくれたし、俺がリーダーである事を良しとしてくれた

ここは、俺にとって初めての居場所になったんだ

「サックー!襲がマジギレしてんだけど!怖い!」

やれやれ、また冬羽は何をやらかしたんだか...

「怒らせたの冬羽でしょ?何したの」

「えー!俺なの?!やっぱり俺なの?!そりゃ、ちょっと襲たんが集中してたところに創作ダンスしながらにじり寄ったけどさ!」

本当に何してるんですか君は

「創作ダンスって何...」

「テーマはクリスマス!まずこうやって手をわさわさしてー...これ、ツリーを表現してんの。んで、次にキラキラーっと...これ電飾な!そしたら...」

「もういい、いいからやめて」

保育園のお遊戯会の方がクオリティ高いんじゃないかと思うような酷いダンスを見た...これは襲じゃなくてもイラッとする

「冬羽テメェ逃げてんじゃねぇよ...今日こそ首絞めてやる」

「ぎゃー!!!襲たん般若の形相!!!」

この2人は仲が良いのか悪いのか
冬羽が一方的にすり寄っているようで
実は襲も嫌じゃないんだよね

「あー、そこまで。襲ちょっと落ち着いて...あのダンスはすごくイラッとする、それはよーく分かる」

「ちょ、サックー酷くね?!」

「元凶は黙って」
「あ、ハイ...」

「襲が集中してるのにあんなイラッとする創作ダンスもどきで邪魔した冬羽が悪いね...でも首を絞めるのはいつでも出来る。今は舞台本番が控えてるからとりあえず、冬羽の謝罪で許してやって?」

「...いつでも出来る?...それもそうだな。分かった、咲玖に免じて許してやる」

「襲たぁん♡♡ありがとうそしてごめんなさい!!!サックー愛してるぅ♪」

今、首を絞めるのはいつでも出来るってところ反芻してたけど良いのか...

「咲玖たーん!!僕の髪留めが無いー!」

おっと、これはデジャヴ...しかも数分前の...オカシイナー

「黒雨くーん...さっき大事にしてって言ったでしょー」

「あれは衣装!今度は僕の私物!いいから早く探してよね」

それが人にものを頼む態度ですか

「あー......あった、ほら黒雨これ」

「僕の髪留めー!...む?」

「どうした?」

「さっきの衣装もこの髪留めも全部 咲玖たんが見つけてる...さては君、僕のもの隠して回ってるんでしょー!一緒に探すフリをして見つける事によって好感度アップでも狙ってるんですかー???」

それはあんまりだ...
あと髪留めを頬にぐりぐりするのをやめていただきたい。痛い。

「ねぇ聞いてるの?窃盗犯さーん??」

あ、なんか既に犯罪者になってる

「被害妄想もその辺にしてもらっていいですか黒雨くん...」

これみよがしに拗ねながら髪留め攻撃をやめない黒雨を取り押さえつつ
ふと楽屋の時計を確認する

「うわ!開演の時間だ!」

冬羽と襲を見ると
ちゃんと衣装に着替えてメイクも済ませ
スタンバイOKだった

「ま、やれば出来る子...だからね」

黒雨を宥めながら髪留めを付けてやり
自分の衣装とメイクの最終チェックをして皆に向き直る

「よし、準備はいいね?今日は舞台最終日...今までの稽古、公演を思い出して全力でやり切ろう!」

「「「おう!!!」」」





メンバーをまとめるのは
控えめに言っても大変だ
でも俺はそれを楽しんでる
うるさくて、手がかるこのメンバーを
Vanneという居場所を
俺もまた、愛してるんだ...

STORY SELECTION[ Vanne 黒雨 ]

好きなものは森とあけび
カニカマパーカーを愛用して
無邪気な邪気を纏い天真爛漫に生きてる
それがこの僕、CCH事務所の可愛い担当役者・黒雨(くろあめ)

「ぱんぱかぱーん!黒雨たん参上ー!」

「ぐぅっ...!!黒雨、飛び付かないで...痛いよ」

楽屋に入るなり思いっきり咲玖に抱き付くのが僕の日課

「サックーその体格で何言ってるのー?僕なんて軽々でしょー??」

「勢い付けすぎなんだよ君は...」

「えへへー」

「ほら、黒雨...果物あげるから降りて」

「果物?!なに??食べる!!」

「りんごだよ、今切ってあげるからね」

「りんごぉ?僕があけび好きと知っての所業なの?ねぇ!ねぇ!?!?」

特技は人を責めること
悪気はないよ?

「所業って...あけびなんて売ってるものじゃないし無理だよ」

「へええええ?サックーの愛情はそんなものですか...僕のために森へ行ってあけびを採って来てあげようって優しさはないんですか...いつからそんな非情な子になったのかなー?」

「...ちょっとその優しさは持ち合わせてなかったよ、ごめんね」

「今からでも遅くないよ?」

「そんな譲歩されても行かないよ...」

うーん、楽しい
こういうやり取りに生き甲斐を感じる
そんな僕に一番付き合ってくれるのが咲玖
たまに怒るけど、優しいから好きだな

それから...

「おはようございまー...ぐっは!!」

「トワたーん!おはよー!」

「く、黒たん...頭がみぞおちを直撃しましたけど...?」

「やーだ、トワたん
ちゃんとガードしなきゃー」

「そっかー、俺のガードが遅れたのが悪いのかー...ってンな訳ないだろー?人に向かって激突してくるんじゃねーよっ」

「きゃー!イタイ!イタイ!頭ぐりぐりしないでーっ」

うんっ、楽しい!
このやりとりに友情を感じる
僕と同じ目線で遊んでくれるのは冬羽
お兄ちゃんみたいで好き

それから、それから...

「おい、お前ら入口で騒ぐな...うるせぇ」

「かっさっねったーん!!」

「...あっぶね」

渾身のタックルを
避けられた...だと...?!

「ちょっと襲たん!僕からの愛のハグを受け止められないと言うのっ??」

「何が愛のハグだ...タックルじゃねーか」

そしてタックルだとバレているー
うーん、手強い

「おい、これやるから大人しくしてろ」

「なになにー?わっ、いちごキャンディ!ありがとう襲たんー!」

うん...楽しい
このやりとりに愛情を感じる
襲はいつもお菓子くれるから大好き
あんまり喋らないけど
目が優しいから怖くないんだ

「今日もみんなが優しくて僕は幸せだよー」

「「「お前は一つも俺らに優しくないけどな」」」

「あー!失礼しちゃうー!こんなにみんなの事愛してるのにぃ」

本当に...愛しくて仕方ない僕の大切な仲間
これからもずっと一緒だといいな

ずっと変わらないまま...


なんて、嘘なんだけどね。

STORY SELECTION [ Vanne 冬羽 ]

わりと普通の家庭に産まれて
一人息子だったからか大切に育てられ
他より見目が良かったから
気が付けばティーン雑誌のモデルをしていた

そこから今の事務所に移籍して
役者を始めたところ
そこそこ人気が出て現在に至る

CCH事務所の看板役者
冬羽(トウワ)...俺の事ね。

自分で言うのも図々しいけど
俺は人当たりがいいし世渡り上手だ
仲間にはウザイなんて言われることもあるけど、それも友情の成せる技みたいなもので...

「なぁなぁ襲たーん♡」

「"たん"を付けるな"♡"もやめろ気持ち悪い」

「やーん襲たんったら照れちゃって!」

「人の話を聞け!」

同じ事務所の同期で一番愛想の無いこの襲 白(カサネ シロ)すら
口では嫌がりつつ俺の方に向き直って相手してくれる

これ、俺の特権だと思うんだよね

「それで?話は?」

「ああ、俺さぁ マジで人好きになったことねぇの...てか 好きってナニ?みたいな?
襲たんは人を好きになるってなんだと思うー?」

「はぁ?お前 何年生きてんだ
イマドキ小学生でも恋愛感情くらい分かるぞ」

「うっそ?!やだ俺すげぇピュア!!」

「違ぇだろ 馬鹿なんだろ」

「なんだよー、そういう襲たんは知ってんのかよコイゴコロ

「人並みには分かる」

マジかぁ...この襲にも恋心はあるのかぁ
俺ってば心が欠けてるのかしら

なんでも小学生の頃、俺が通ってた学校では1クラスにつき3組はカップルがいたらしい
さらに中学生の頃は5組
高校生にもなればクラス中が恋、恋、恋

俺はそんな中で一度もコイビトなんて
甘い存在、出来たことがなかった

「告白はされた事あんだろ?」

「そりゃ、あるよ?俺イケメンだもーん...でも 女の子って可愛いけど怖いじゃん?付き合ったら日に日にそんな裏の顔が見えてくるのかと思うとゾッとするからさー」

「自信と偏見ヒデェなお前...恋なんて一生 知らずにいろ
世の女のためにも」

「この業界それなりに自信がなきゃやってけませーん
襲たんだって自分の顔が悪いとは思ってないくせにー
っつーか!女の子が怖いのはマジだから!怒らせたら地獄だから!」

「まぁ...な、自分で自分を卑下したらファンに申し訳ねぇからな
それにしても...恋した事もねぇのに女を怒らせた事はあんのか」

「告白された時に"ごめん、君には魅力が無い"って言ったら往復ビンタ食らった...昼間だったのに星が見えたぜ...フッ」

「最低な自業自得じゃねぇか」

「いやいや、俺には君の魅力が分からないって意味だったんだけどー・・・ん?やっぱり酷いかな」

「なんとも言えねぇ...」

だって、本当に分からなかった
その子は確かに可愛い顔だったし
声も静かで服のセンスも良くて
けれど、ただそれだけだった

噂に聞くビビっとくるものとか
心がキュンとするとか
そんなもの感じなかった
だから 断ったんだ

「俺ってもしかしてホモ?男が好きってやつ??」

「心当たりでもあんのかよ」

「んー?ねぇよー?でもさぁ、女の子よりか男の方が同性だし...一緒にいて楽だとは思う」

「それは友情だろ」

「うーん...でも俺、襲たんとキス出来るよ?したことないけど、多分 女の子にするより抵抗ない」

「バーカ、根本が違ぇよ
"キスできる"じゃなくて"キスしたい"が恋
お前のは恋じゃなくてゲーム」

「じゃあ、したい
しよーぜ襲たーん♡」

「ふっざけんな!誰がするか!」

「ぐふっ!!!」

冗談なのに本気の蹴りを食らった
襲のこういうところが好き
遊びとか、ノリで一線を越えたりしない
硬派なところ

でも、この好きも所謂
友情なんだろう

俺は不安定なところにいて
男だから女が好きとか
男だけど男が好きとか
女になりたいとか
男らしくいたいとか
そんな風に自分を属したい場所が
どこにもない状態で

ただ人間が好きで
生きているものが愛おしくて
人と関わっていたくて

これから先も きっと
誰か一人を愛したりしない
そんな気がしている...








「...ん?なぁ、襲たん!俺がマジで恋を知って その相手が襲たんだったらお前は本気で考えてくれんの?」

「言っとくが俺はノーマルだからな!
でも...まぁ、お前が本気で俺に恋した時にはちゃんと向き合ってやるよ
どんな答えになるかは分からねぇけどな」

「......あ、今ちょっと襲に惚れた音がしたかもしんない
ねぇ、これ恋?恋じゃね??」

「やめろ馬鹿!寄ってくんな!」

「向き合ってくれんだろー???」

「顔がニヤけてんだよ!てめぇふざけてんだろ!」

「えー?本気かもよー?」

...ずっと、このままでいい
恋なんて知らなくても
俺はその辺の恋人達より幸せだ

CCH創作事務所

初めましての方は云々。
こちらは絵描きの珈琲チョコと
創作作家の恩田啓夢による合作ブログです。

活動ペースはまったり、ゆるっとぬるっとやっております。

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それでは、また。