『相対』✱参

俺はその目をよく知っていた

嫌という程、見慣れていたんだ

 

俺には五つ年の離れた兄がいた

特別、頭がいいとか顔がいいとか

そんなんじゃなかったけど

とにかく優しい兄だった

 

いつも俺のくだらない遊びに付き合ってくれて

母親の手伝いも率先してやりながら

仕事から帰って来た父親を労い肩を揉む

そんな自慢の兄だった

 

だけど、気付いていた

兄が時折みせる"眼差し"

憎しみと畏怖の混じった視線

それが日常の至る瞬間に現れては消える

 

まだ幼い子供だった俺に

その眼の意味を知ることは出来なかったけれど

本当は兄が家族を嫌いなのかもしれないと

そう、心の片隅で考えたりした

 

ただ、父や母は何も気付いていないようだった

兄の優しさに誇りを持っていて、反抗期が無かったことを度々他所の親に自慢していた

 

ある冬の日

父は出張、俺は学校のクラブ活動で家には母と兄しかいない日があった

そんな特別な事じゃない 今までも何度かあった

だけどその日は、特別な日になったんだ

 

クラブ活動を終えて帰宅すると

いつも玄関まで迎えに出てくれる母がいなかった

少し不思議に思ったけれど、料理でもしていて手が離せないのだろうと気に止めなかった

 

「ただいまー」

 

開けっ放しのドアからリビングに入ると

そこにはソファに寝ている兄がいた

 

「兄さん、こんな所で寝たら体が痛くな...る...」

 

それは、寝ているというにはあまりにも惨い

大好きな兄の変わり果てた姿だった

 

包丁で胸をひと突き、その柄を握りしめたままの両手には

血で染まった紙がくしゃくしゃになって握り込まれていた

 

俺は恐る恐るその紙を引き抜いて、震える手で開き、読んでみた

 

"その存在が罪だと

人間はいつまで経っても気付かない

だけど同じ人間の僕には気付かせる術がない

消え去るしかないんだ

俺は生まれてくる種を間違えた

さようなら、来世はどうか鳥になれますように"

 

「...なんだよ、これ」

 

頭の中に、優しかった兄の笑顔と俺だけが気付いていたあの眼がぐるぐると駆け巡った

 

目眩と吐き気に襲われ急いでキッチンへ向かうと

シンクを目の前にして何かに躓いて転んだ

 

起き上がり、後ろを振り返る

 

緑色のエプロン

柔らかいロングワンピース

緩く束ねた髪にシンプルなバレッタ

それは紛れもなく母だった

 

お腹の辺りから流れ出している赤色が

俺の足元までつたっているのを見て

息をすることすら忘れそうになった

 

それからの事はあまり覚えていない

きっと外に飛び出して近所の人に助けでも求めたのだろう

気づいた時には父が帰って来ていて、警察官が慌ただしく動いていた

兄と母がいた場所には血痕だけが残っていて

その後、二人の姿を見たのはお葬式の時が最後だ

  

"兄による無理心中"事件はその方向で片付けられた

動機は不明という事になっている

 

俺が見つけた兄の遺書は、警察には見られていなかった

記憶にない放心状態の中で無意識に隠したらしい

何故隠したのかは俺にも分からない

そしてその遺書は、今も俺の手元にある

 

✱✱✱

 

当時、七歳だった俺は今年十五歳になった

事件から八年が経過した今でも

時折あの日を夢に見る

 

今は父とアパートで二人暮らしをしている

元々は一軒家だったけれど、住み続けるには辛すぎたために引っ越した

 

父はあの日から仕事漬けの毎日を送るようになった

"働いていると気が紛れるんだ"といつも疲れた顔で話す

お酒やギャンブルに逃げなかったのは、まだ子供の俺がいたからかもしれない

 

斯く言う俺も十四歳で芸能の仕事を始めた

学校で退屈な授業を繰り返し受けたところで気は紛れない

慌ただしくて、賑やかで、休む暇もないような仕事が良かった

最初は子役事務に入ってノウハウを学んで

セルフプロデュースで活動するようになったのが十五歳の誕生日の後

 

次の仕事で自分が参加する雑誌のバックナンバーをペラペラと捲っていたその時

一人の男に目が止まった

 

黒髪に小さな顔、小柄な身体...そして

 

「兄さんと同じ眼...」

 

 

同じと言っても色形じゃない

眼差しだ

憎しみと畏怖が混ざったような眼

 

雑誌の写真だからだろう、その要素は微々たるものだった

でも、じゃあ素のコイツの眼はどうなんだ

兄さんが時折みせたあの眼より

もっと強い憎悪が含まれているんじゃないか

 

「...コイツになら分かるのか?」

 

"生まれてくる種を間違えた"と嘆いた心

"鳥になれますように"と願った最期

兄さんの気持ちが、考えが、苦しみが、本性が

同じ眼をしたコイツになら...

 

 

 

 

 

 

✱続く✱

VanneキャラクターソングVol.2 絆

容赦と安寧

歌:『黒雨』&「咲玖」

詞:mizunowater/恩田 啓夢

曲:染井 シュウ

 

『ゆっくり侵食してゆくような

心地悪い温度に溶かされる前に

距離を置かせて 逃げさせて』

 

「土足で心を踏み躙らないよう

細心の注意を払って

飲み込む言葉はどこに吐けばいい」

 

『例えば 今 何もかも

消え去る時が来たとして

笑う僕を許せないなら

君の望む 居場所はここにはない』

 

『「泣いて叫んで叶うなら

初めからこんな願いなんて

星にも神にも祈らないよ

ねぇ 右にも左にも行けない

八方塞がりな毎日で

どれだけ受け入れたら その安息は手に入るの?」』

 

「凄凄切切 解り合えない

この空洞を何で埋めよう

触れようと手を伸ばしてみても」

 

『許容範囲は極めて狭い

その手をどう切り落とそう

指先一つ掠めていかないで』

 

「例えば 今 心変わりして

その笑顔が本物になっても

疑いそうで怖いんだよ

今更 君を救えない...?」

 

『「駄々をこねる子供みたいに

あれも嫌でこれも嫌いキリがないな

いっそ わかり易く線引きして

八方塞がりな毎日でも

仮初めの安息を手に入れてみようか」』

 

『ゆっくり侵食してゆくような

心地悪い体温に溶かされるように

この感情を焼き切って』

 

「土足で心に踏み込みながら

注意する事も忘れて

この言葉は君に吐き出そうか」

 

『「...なんて出来もしない理想」』

VanneキャラクターソングVol.2 絆

Day and Night

歌:『冬羽』&「襲」

詞:mizunowater/恩田 啓夢

曲:染井 シュウ

 

『今 この手に掴む

好奇心を捨てるなんて出来ない』

 

「また 目を離すと

見えなくなるその姿を追いかけて」

 

『どんなに 遠く突っ走っても

引き戻してくれる

お前の手があれば きっと

ここに 帰ってこられるから』

 

『「明日に後悔だけは残さない

何を得ても 失っても 笑えなきゃ意味が無い

葛藤 迷走 苦悩?抱えないで

今を生きて 夜を待って また朝を迎えたい」』

 

「もし くだらない幻想に

囚われた時は蹴り飛ばしてやろうか」

 

『明るい場所で薄暗い考えに

囚われる事もあるけど

 そんな時は お前の光を目指して歩くよ

だから いつも そこで照らしていてくれ』

 

『「今日も後悔だけは生み出さない

大切なものは手放さずに 走れなきゃ意味が無い

悲しい事があっても振り切って

明日も生きて 朝を待って また夜を越えて行く」』

 

『とめどなく流れる時間は 待ってなんてくれないだろ

遅れた奴から 置いていかれるんだ

準備する暇があるなら進み出したい』

 

『「一生 後悔なんて抱えない

かけがえないものだけ拾って最後まで笑ってやる

困難 災難 不運?知らねぇな!

今を生きて 明日も生きて

夜を待って 朝を迎え

 

強く生きて 走り抜けて

朝と夜を越えて行く」』

静かな夜

強がらなくていいと分かっていても

泣きたい時に泣くって簡単な事が

難しく感じたり やり方を忘れたり

 

「空元気も元気のうちだよ」

それはそうなのかもしれない

だけど そう言われればそれはそれで

どうしようもなく泣きたくなって

叫びたくて途方に暮れる

 

もし 今すぐ自分の心に素直になれたら

泣いて 叫んで 笑って

馬鹿な悩みだったなぁって

思えたりするのかな?

 

こんな静かな夜にはいつも

あなたの言葉を思い出します

「もう頑張らなくていい」

「いっそ倒れてもいいんだよ」

溢れ流れた涙はとめどない

 

長いこと立ち止まっていたせいで

歩き方を忘れてしまったようで

踏み出す足は右?左?どっちからだったっけ

それとも どっちからでも良かったんだっけ

 

いつまでも歩き出せずに困っていると

あなたが不意に後ろから背中を押す

転ばないように咄嗟に踏み出したまま

一歩 また一歩と歩き出せたんだ

 

こんな静かな夜にはいつも

あなたの言葉を思い出します

「立ち止まってもまた歩き出せる」

「何度でも教えてあげるから」

また溢れた涙で溺れそうで

 

強がらなくていいと分かっていても

泣きたい時に泣くって簡単な事が

難しく思えて仕方なかったあの頃の僕は

今あなたを想って泣きじゃくっています

 

もうここにいないあなたへ

もう二度と会えないあなたへ

大丈夫、泣き終わったら歩き出すから

 

さよなら...

『相対』✱弍

f:id:mizunowater:20170706220554j:image


どれくらい経ったのだろう

ふと目を覚ますと 更衣室の床に寝ていた

いや、寝かされていたというべきか

 

そこに結斗の姿はなく ただ傍らには衣装が綺麗に並べられていた

それが僕の着る分だと理解して勢いよく起き上がる

 

撮影は?どうなった?

あれからスタッフはここに入ったの?

精密ドライバーは...

 

混乱した頭で何とか物事に優先順位を付ける

まず凶器のドライバーを探して隠さないと

それから着替えて外に出てみよう

それほど時間が経っていないのなら ここにいない結斗は先に着替えて外へ出たのだろう

スタッフがここに入って来ないようにしてくれている事を願う

 

「何を...言ったんだろう」

 

ドライバーを探しながら 意識が途絶える直前の出来事を思い返した

『お前は人間が嫌いなんじゃなくてさ

人間が──だろ?』

何度繰り返しても肝心な所が思い出せなかった

朦朧として聞き取れなかっただけなのか

聞きたくなくて遮断したのかさえ分からない

 

「...って、ドライバー無いし」

 

さほど広くない更衣室をくまなく探したけれど

ドライバーどころか、血痕ひとつ見当たらなかった

何の為かは分からないけれど結斗が持ち出したんだろう

 

ドライバーを諦めて早々と着替えを済ませた

乱れた髪も整えて靴を履き替える

 

ドアノブに手をかけたところで深呼吸をして

まだ少し残る気持ち悪さを落ち着かせてから外に出た

 

✱✱✱

 

「あ!黒雨さん入りまーす!」

 

更衣室のすぐ側で待っていたスタッフが声を上げると 他のスタッフがコチラを見る

 

「よろしくお願いしまーす!」「黒雨さん髪ちょっとセットしますねー」「今日の衣装は水OKなんで海入っての撮影も出来ますけど、あんまり無理しなくていいからね」

 

ヘアメイクやカメラマン、衣装さんにアシスタント

様々なスタッフに声をかけられながら砂浜を歩いて行く...と

 

「くーろあーめさんっ!」

 

背後から馴れ馴れしく姿を現した彼の笑顔には

もうあの冷たさは感じられなかった

最初の演技よりも完璧な演技で、子供らしく無邪気な空気を醸し出していた

 f:id:mizunowater:20170711215615j:image

絆創膏はスカーフで上手く隠されていて 僕としてもホッとした

撮影直前のモデルに傷を付けるなんて...例え結斗が自らした事だとしても気分が良いとは言えない

 

「ユウトくん...よろしくね」

「はい!よろしくお願いします!」

 

僕もいつものように笑顔を作り 何事も無かったかのように撮影を始めた

 

目線を、手を、背中を...仲良く合わせながらカメラのシャッター音を聴く

正直この瞬間にも吐き気が止まらないし ハッキリ言って逃げ出したい

だけど、これでもプロとして仕事をしているのだ

レンズ越しのカメラマンの目を騙すのは もはや僕の特技だった

 

例えば雑誌の読者が僕らの写真を見て

プライベートでも仲が良いのではないかと勘違いするほどの演技をする事も容易で...

 

「精密ドライバー、記念に貰っておくぜ黒雨」

 

撮影も終盤に差し掛かった頃

波打ち際で戯れながら 小声で耳打ちされる

 

「記念って...な 、ん...!」

 

突然の事に気を取られたところを押されて転んだ

上には結斗が被さっている

押し倒されるとは...不覚

 

「いちいち距離が近いよ 君

僕そういう趣味ないから、やめて」

 

少し離れた場所にいたスタッフ達が「大丈夫ですかー?!」などと声を上げている

カメラマンもファインダーから目を外し、こちらを心配して首を伸ばしていた

 

「ほら、早く起き上がらないと不審に思われるよ

本性バレたら困るんでしょ?ユウト...」

 

軽い舌打ちをして体を起こし、僕に手を差し伸べて笑った

スタッフの前で その手を払うわけにもいかず渋々手を取ると

少し乱暴に引き上げられた

 

「言っとくけど、逃がさねぇから

お前には俺を殺してもらう...必ずな」

 

水飛沫と音に紛れて 冷たい声が降る

一体、何故こんな事になったのだろう

結斗はどこで僕の人間嫌いを知って

どういうつもりで殺されようとしているのか

 

そして、もし結斗の言った通り 僕が人間を嫌いな訳じゃないのなら

この吐き気の原因はどこにあるのだろう

考えても答えは出ないことは分かっていた

「人間が殺したいほど嫌い」

この気持ちは物心付いた時から変わらないのだから

 

✱✱✱

 

撮影は順調に進み1時間ちょっとで終わった

その間なにかと僕に触れようとする結斗にイライラしたけど、こんなくだらない遊びは今日限りだ

 

逃がさない...なんて、逃げるに決まってる

もう仕事の話を持って来ても関係ない

心証が悪くなろうがなんだろうが断る

 

スタッフに軽く挨拶をしてさっさと更衣室に向かった

後ろでは結斗がカメラマンと楽しそうに話している

あんな本性を隠してよくやる...僕は必要以上に人と関わりたくないから 演技をするのは仕事の間だけだ

仕事が終われば足早に帰る

たまに顔見知りのスタッフから打ち上げに誘われるけど、適当に理由を付けては逃げている

 

そこまで考えてふと違和感を感じた

この違和感に関して深く考えたくないような、でもハッキリさせたい気分だった

 

果たして逃げるとは どんな意味を持つ言葉だっただろう

そこに生まれている心理は どんなものが相応しいんだっけ

僕は自然を壊すくせに直せない

直そうとしてさらに壊していく人が憎い

だから消えて欲しい、関わりたくない

いつも逃げたり遠ざけることに必死だ

 

だけど、憎いと嫌いは微妙に違う

じゃあ僕が人を嫌いなのは

 

どうして...?

f:id:mizunowater:20170712021954j:image

『お前は人間が嫌いなんじゃなくてさ

 

人間が"怖い"んだろ?』

 

心にかけていた鍵が、壊れる音がした 

 

 

 

 

 

 

✱続く✱

 

 

『相対』✱壱

f:id:mizunowater:20170701172454j:image
草木が枯れ、動物達の眠る頃

僕は"奴"と出会った……

 

✱✱✱

 

「え、外部の子供と仕事ぉ?

やだ!ぜーったいヤダ!!」

 

咲玖に呼ばれてカフェに来て

奢ってくれると言うのでケーキを3つ頼んだところで

こんな事なら来なければ良かったと後悔した

 

「やだ…って、もう決まってるんだよ黒雨

来週 その子と一緒に雑誌の撮影をしてもらうからね」

 

目の前には写真付きのプロフィールと

仕事内容の書かれた資料が置かれている

写真に写っているのは無愛想な表情をした金髪の少年

見るからに生意気そうである

 

「えー、っていうかこの子だれー?僕らの事務所の子じゃないよね?」

 

「ユウトくんだよ、結ぶに一斗二斗の斗で結斗くん

芸能事務所には所属しないで セルフプロデュースで活動してるんだって

まだ15歳なのに...凄いよね」

 

ニコニコしながら感心している咲玖を見て

ああ やっぱり平和主義者って呑気だなーと思った

 

15歳の子供がセルフプロデュース...

つまり大人にあれこれ言われる事なく

自由気ままに芸能界を生きているのだ

性格に難がある可能性は大きい

 

それに一つ、気になる事がある

 

「ねぇ 僕は契約でVanneメンバー以外とは仕事しないはずなんだけど

なんでこの子との仕事が決まってるの?」

 

人間が嫌いな僕がこの世界で仕事をするには

かなり無理があったんだけど

それでも引き受けたのは この契約があったからだ

何故ここに来てそれが反故にされたのか

全く訳が分からない

 

「うーん、それがね この結斗くんたっての希望らしいよ

事務所としても契約の話はしたんだけどね

ドタキャンされても構わないから とにかく仕事の話だけでも黒雨にしてくれって

もしかして...黒雨の熱烈なファンなのかな?」

 

爆発しろ昼行灯

"ドタキャンされても構わない"?

プライベートのお誘いならまだしも

こと仕事においてそんな馬鹿な話があるか

既に仕事内容は僕に通った

ここで無理矢理断ろうが本当にドタキャンしようが

心証が悪くなるのはこっちだ

このやり方は僕の退路を完全に断つ為

 

「...そんなに僕に会いたいんだ ユウト」

 

改めてプロフィール用紙を見てみた

趣味がアクアリウムなのに好きな食べ物は焼き魚

どういう神経をしてるんだこいつは

 

しかも僕より背が高いとか...気に入らない

 

「きっとすっごく会いたいんだよ

1日だけだし 一緒に仕事してあげなよ

ついでにサインくらいプレゼントしたら?」

 

完全に結斗をファンだと勘違いしているおバカさんは置いておいて

会いたいなら会ってやろう

何が目的かはどうでもいい

二度と僕に近付きたくなくなるようにしてやろう

 

そう、思っていたのだけど...

 

✱✱✱

 

吐く息も白いこの季節に

僕らモデルは夏服を着て撮影をする

来年の特集に載せる写真を今撮るのだ

 

今回、ロケ地も相手から希望があった

 

目の前に広がるのは

どこまでも続く、ゆらゆらと、青い...

 

「...海とか、馬鹿じゃん」

 

そりゃあ夏のロケーションとして

海での撮影は避けて通れないけれど

ただでさえ初対面の奴と仕事なんていう地獄をこれから味わう僕に

相当な酷い仕打ちである

 

「最初から長引かせるつもりはなかったけど

本当にさっさと終わらせよう」

 

衣装に着替えるために仮設の更衣室に向かった

結斗はまだ来ていないのか、今のところ会ってはいない

 

なんならこのまま来なくても...

 

「あ」

 

願い虚しく そこに彼はいた

更衣室の奥で夏服に身を包み 鏡でバランスを調整している

 

鏡越しに目が合った瞬間

少しだけその口元が歪んだ気がした

 

「あ...黒雨さん

その、挨拶が遅れてすみません

衣装のサイズが合わないかもしれないとスタッフさんに言われて

急いでフィッティングしてたんです」

 

慌てて申し訳なさそうに頭を下げて

少し丈のあっていない裾を広げてみせる

その仕草は子供らしく、礼儀は大人っぽい

ただ それはその辺の馬鹿にしか通用しない

 

「挨拶なんか要らないし、ましてや"すみません"なんて思ってもないこと言わなくていいよ

ユウト...僕に用があるんでしょ?」

 

ほんの数秒 僕を見つめた後

すぐに表情を戻して、笑った

15歳という年に似合わない

酷く冷たい笑顔

 

「お前さぁ、人間嫌いなんだって?」
f:id:mizunowater:20170705235956j:image

「!」

 

ゆっくりと近付き、僕の真後ろにある扉に手を伸ばすと

目を見たまま静かに鍵を掛けた

 

「...やっぱり本性はバレたら困るんだ?」

 

「まぁな、だからこれから先の会話はオフレコ

お前も本性バレたら困るだろ?黒雨」

 

少し遠くで撮影の準備をするスタッフ達の声が聞こえる

仮設の更衣室だから防音性は低いけれど

扉を閉めてしまえば 会話はそうそう聞こえない

 

「質問に答えろよ、お前 人間嫌いなんだって?」

 

未だ鍵に指を掛けて 僕との距離を取ろうとしない態度に吐き気がする

 

「そうだよ。だから...

 

僕から離れて」

 

腰のシザーケースから精密ドライバーのマイナスを取り出して

結斗の首元に突き付けた

 

「うわ、凶器持ちかよ 信じらんねー」

 

そう言いつつ 彼は大して怯まなかった

ギリギリでドライバーを避けながら その指はまだ鍵に触れている

 

「離れてってば、気持ち悪い」

 

皮膚に軽く刺さる程度に力を込めると

僕の要求とは逆に、手を掴んできた

 

その行動に驚いて手の緩んだところを逃さず

あろうことかそのままドライバーを自らの首へ突き刺した

 

「な...に、してんの」

 

早く引き抜こうと力を込めるも 案外強い結斗の握力に負けて

引くことも離すことも出来ない

 

「はは、お前さぁ

人ひとり殺せないクセに人間嫌いとか

 

...浅ぇな 雑魚」

 

抵抗を止めた僕の手ごとドライバーを引き抜くと

傷口を手で抑えながら部屋の奥へ歩いて行く

 

やっと離れてくれたというのに 気持ち悪さは残ったままだ

結斗の血が付いたドライバーを その場に捨てることも仕舞うことも出来ずに立ち尽くした

 

「あーあ、こんなんじゃ死なねぇよ

次はもっとマシな凶器持ってこい」

 

私物であろうトートバッグから 大きめの絆創膏を取り出し

手馴れた様子で貼りながら文句を言い出した

 

「ナイフはやめとけよ、ダセェから

まぁ 精密ドライバーも有り得ねぇけど」

 

嘲笑し、また僕の方へ近付いてくる

距離を置きたくても後ろは扉 逃げ場はない

 

「...君は 死にたいの?」

 

先程よりは距離の空いた所で立ち止まると

僕の問いに満足気な顔を見せた

この質問を待っていたみたいだ

 

「死にたいんじゃなくて、殺されたいの」

 

「...僕に?」

「お前に」

「何故?」

「秘密」

 

理由すら言わずに殺されようというのか

なんて身勝手な子供だ 全く可愛げもない

そもそも僕は本当に人間が嫌いなのに

僕自身が人間だから殺したくても殺せないんだ

果たしてコイツにそういう微妙な部分が伝わるかな

心とか、感情とか、無意識的な話が

この子供に伝わるの...?

 

しばらく考え込んでいる間に

気付けば結斗との距離は無くなっていた

f:id:mizunowater:20170706182713j:image
 

緩く、至極優しく 抱きしめられていた

 

「ぅ...え、待って 待って 吐きそう!」

 

少し高いその体温が 僕の皮膚に混ざって飽和する

慣れた咲玖達の温度とは違う感覚に

息が詰まって倒れそうになる

 

だけど、結斗が身体をしっかり支えていて

倒れ込むのを許してくれない

 

「はは、本当に気持ち悪そうだな」

 

「分かったなら 離して、よ...お願いだから」

 

懇願してみたものの

無視を決め込まれてそのまま話が進む

 

「なぁ黒雨...

お前は人間が嫌いなんじゃなくてさ

 

人間が───」

 

何言ってんの...聞こえない

気持ち悪い

 

意識が

 

遠のく

 

 

 

 

 

 

✱続く✱

 

Vanneに100の質問!

f:id:mizunowater:20170630142524j:image

「どーも、襲です

質問100個?めんどくせぇ...

早く終わらせようぜ」

 

好きな色は?

「モノクロとかアースカラー


好きな食べ物は?

「蟹...タラバガニ」


好きな匂いは?

「香水ならブルガリのプールオム使ってるけど...」


好きなアイスの味は?

「チョコ系」


好きな食べ物は?

「...あ?」


逆に嫌いな食べ物は?

「セロリ...」


好きな動物は?

「猫(即答)」


苦手な動物は?

「ハムスターだな...小さすぎて扱うのが怖ぇ」


好きなおにぎりの具は?

「鮭」


朝ご飯は米派?パン派?

「パンだな」


ケータイ何色?

AQUOS U SHV35のシルキーホワイト」


好きな数字は?

「考えたことねぇ...」


好きなアプリは?

「特にねぇな」


よく使うアプリは?

「低気圧アプリ...気象病持ちなんだよ」


小さい頃の夢は?

「バスケ選手」


今の夢は?

「ちょっと前まで願ってた夢はもう叶ったから他にはねぇよ...それが何だったかは言わねぇ」


恋愛ドラマ、コミカルなドラマ、どっちが好き?

「どっちも興味ねぇな」


友達多い?

「ンなわけねーだろ、Vanneメンバー以外には3人くらいしかいねぇよ」


座右の銘は?

「初志貫徹」


なりたい顔の芸能人は?

「ある訳ねぇだろ

...あ、いや 悪い意味じゃねーから」


彼氏、または彼女にしたい芸能人は?

「同業とは付き合いたくねぇな」


面食い?

「いや、全然」


何フェチ?

「目...が、綺麗な奴には惹かれるかもな」


苦手なスポーツは?

「水泳だな...25m泳ぐのがやっとだ」


得意なスポーツは?

「バスケ」


遊園地に行ったら1番最初に乗るものand最後に乗るものは?

「まず遊園地に行かねぇ」


怖い映画、話とか平気?

「平気だな」


チャームポイントは?

「はぁ?知るかそんなもん本人以外に聞け」


コンプレックスは?

「地味に背が低い...とか」


寝る体勢は?

「仰向け」


彼氏、彼女にする条件は?

「本気で俺を愛して本気で俺が愛せる奴なら誰でもいい」


理想の告白は?

「好きですとか付き合ってくださいとかハッキリ言ってくれりゃシチュエーションはどうでもいい」


恋愛は奥手?

「つーか、今はあんま興味ねぇ」


あ、性別は?

「見て分かんだろーが男だよ」


好きなキャラクターは?

「フィリックス・ザ・キャット」


朝弱い?

「すげー弱い...低血圧だからな

スヌーズ3回目でやっと起きれるレベル」


目覚まし何個?

スマホのアラームだけだな」


武勇伝は?

「...ねぇよ」


告白回数は?

「1回もねぇわ」


告白された回数は?

「10回までは数えてたけどな...すぐやめた。だから分かんねぇ」


ファッションで1番どこに気合入れる?

「アウターとか、靴」


はじめに洗う体の部位は?

「最初に頭から全身シャワー浴びて湯船浸かるからな...洗うのは...あー、頭か?多分」


カラオケ十八番は?

「カラオケ行かねぇ...」


オタクですか?

「いや、別に」


何の?

「...あ?」


好きな男性アイドルは?

「いねぇよ」


好きな女性アイドルは?

「それも...いねぇな」


何歳で結婚したい?

「35」


理想の子供の数は?

「1人でいいだろ」


それは男の子?女の子?

「男の方が楽そうだよな」


生まれ変わったら男?女?どっちになりたい?

「男のままでいい」


苦手な音は?

「音?あんまりねぇな...うるせぇのは好きじゃねーけど」


サプライズとか好き?

「普通」


自分はする?

「あんましねぇな...ガラじゃねーだろ」


黒歴史ある?

「子供の頃、一回だけ女物の服着せられた事...」


捨てられない物は?

「特にねぇな...要らねぇもんはすぐ捨てる」


漫画好き?

「多少は」


それは何の?

「ガンアクション系が多いな」


アニメ好き?

「嫌いじゃねぇけど...最近は観ねぇな」


それは何の?

「観ねぇつってんだろ」


好きな音楽は?

「ロック、バラード」


足のサイズは?

「25.5」


アクセサリーとかつける?

「ピアスは毎日付けてんな...あとはまぁ、それなりに」


貰って嬉しいものは?

「蟹」


部活何に入ってた?または入ってる?

「バスケ部だった」


好きなマークは?

「もっとマシな質問しろ」


くしゃみとか可愛い?それともぶっさいく?

「知るかよ」


やめられない癖は?

「プライベートでも無意識にペットボトルのラベル外す...意味ねぇのにな」


これがないと寝れないとかある?

「寝る前の白湯」


朝の準備時間は?

「20分前後」


好きな漬物は?

「は?漬物?...白菜の浅漬け」


泣き虫?

「いいや、ほとんど泣かねぇな」


何をよく買う?

「缶コーヒー」


期間限定とか弱い?

「いや全く」


お風呂上りタオル何枚使う?

「バスタオル一枚」


タオル何日で洗う?

「逆に何日も使う奴がいるのかよ1日で洗うだろ普通」


お風呂何分?

「30分前後」


ドライヤー何分?

「めんどくせぇからかけねーよ」


ケータイ命?

「別に」


早口言葉得意?

「普通」


あなたは可愛い?かっこいい?

「可愛くはねぇだろ」


彼氏、彼女にするなら可愛い?かっこいい?

「静かっつーか、大人しけりゃそれでいい」

 

とくに気にしない?

「ああ」


好きな芸人さんは?

「特にいねぇ」


最近笑った出来事は?

「撮影で笑えって言われて笑った」


最近怒った出来事は?

「冬羽が鬱陶しかったから怒ったっつーかキレたな」


最近泣いた出来事は?

「ドラマの演技で泣いたけど、プライベートじゃねぇな」


最近驚いた出来事は?

「咲玖が作ってきた菓子の美味さに驚いた

いや、アイツが作るモンはいつも美味いけどな...この間のはデパ地下レベルだった」


最近嬉しかった出来事は?

「飼い猫のシャーロットが肩に乗った」


夜、真っ暗だと寝れない?

「子供じゃあるまいし...普通に寝られる」


お化け信じる?

「いねぇだろ」


サンタは?

「ンなもんいる訳...おい、このインタビューって子供も見んのか?

...いるだろ、信じてるよ」


漫画、小説、どっちが好き?

「小説」


今、どんなカバン使ってる?

「acoustic worldのショルダーバッグ...色はブラウン」


癖毛?直毛?

「直毛だな」


初恋はいつ?

「幼稚園ん時、優しくて大人しい感じの先生だったな」


ストレス発散法は?

「冬羽を殴る」


彼氏何人出来たことある?

「ねぇよ」


サッカー、野球、どっち派?

「あ?なんだその二択、バスケ派だ」


好きな言葉は?

「閑散」


最後に一言!

「...疲れた」