新年の御挨拶

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遅ればせながら明けましておめでとうございます
mizunowater創作事務所です

小説の打ち切り、更新の停止など
昨年はサボり大魔神でございました

というのも
事務所の背景担当である染井シュウが見事
水野家の居候を脱し、独り立ちした為に
活動方針の見直しや欠員の確保など
奔走していた裏事情があります

そして、最終的にどうなったかと言いますと
プロット担当である恩田啓夢の希望により
短編集をメインとした創作ブログにマイナーチェンジする事となりました

また、作画担当であるMizunoWaterによるブログ限定公開の作品や
新たに加入した結城蓮馬のプロデュースによる被写体作品などをお見せしていこうと思います

活動範囲が多岐に渡る為、更新頻度は遅めかと思われますが
引き続きmizunowater創作事務所をよろしくお願いします

それでは、今年もよろしくお願い致します





mizunowater創作事務所一同

虚無の海

泣けば音が止みますか
責め立てるようなこの音は

狂えば息は止まりますか
捲し立てるようなこの鼓動も

この眼に見えているものはなんでしょう


あの日、あの時、例えばわたしが
貴方を信じて愛し続けたなら
ここに貴方はいるのでしょうか
わたしの隣にいるのでしょうか

貴方の残した声と音と震える空気が
今も心に突き刺さる

眠れば夢のように消えますか
嘘みたいなこの現実は

語れば霧は晴れますか
体内に満ちたこの霧は

泣いても音は止みません
責め立てるようなようなこの音は

狂っても息は止まらない
捲し立てるようなこの鼓動も

この眼に見えているものは

貴方がいない虚無の海









著:恩田 啓夢

『相対』✱参

俺はその目をよく知っていた

嫌という程、見慣れていたんだ

 

俺には五つ年の離れた兄がいた

特別、頭がいいとか顔がいいとか

そんなんじゃなかったけど

とにかく優しい兄だった

 

いつも俺のくだらない遊びに付き合ってくれて

母親の手伝いも率先してやりながら

仕事から帰って来た父親を労い肩を揉む

そんな自慢の兄だった

 

だけど、気付いていた

兄が時折みせる"眼差し"

憎しみと畏怖の混じった視線

それが日常の至る瞬間に現れては消える

 

まだ幼い子供だった俺に

その眼の意味を知ることは出来なかったけれど

本当は兄が家族を嫌いなのかもしれないと

そう、心の片隅で考えたりした

 

ただ、父や母は何も気付いていないようだった

兄の優しさに誇りを持っていて、反抗期が無かったことを度々他所の親に自慢していた

 

ある冬の日

父は出張、俺は学校のクラブ活動で家には母と兄しかいない日があった

そんな特別な事じゃない 今までも何度かあった

だけどその日は、特別な日になったんだ

 

クラブ活動を終えて帰宅すると

いつも玄関まで迎えに出てくれる母がいなかった

少し不思議に思ったけれど、料理でもしていて手が離せないのだろうと気に止めなかった

 

「ただいまー」

 

開けっ放しのドアからリビングに入ると

そこにはソファに寝ている兄がいた

 

「兄さん、こんな所で寝たら体が痛くな...る...」

 

それは、寝ているというにはあまりにも惨い

大好きな兄の変わり果てた姿だった

 

包丁で胸をひと突き、その柄を握りしめたままの両手には

血で染まった紙がくしゃくしゃになって握り込まれていた

 

俺は恐る恐るその紙を引き抜いて、震える手で開き、読んでみた

 

"その存在が罪だと

人間はいつまで経っても気付かない

だけど同じ人間の僕には気付かせる術がない

消え去るしかないんだ

俺は生まれてくる種を間違えた

さようなら、来世はどうか鳥になれますように"

 

「...なんだよ、これ」

 

頭の中に、優しかった兄の笑顔と俺だけが気付いていたあの眼がぐるぐると駆け巡った

 

目眩と吐き気に襲われ急いでキッチンへ向かうと

シンクを目の前にして何かに躓いて転んだ

 

起き上がり、後ろを振り返る

 

緑色のエプロン

柔らかいロングワンピース

緩く束ねた髪にシンプルなバレッタ

それは紛れもなく母だった

 

お腹の辺りから流れ出している赤色が

俺の足元までつたっているのを見て

息をすることすら忘れそうになった

 

それからの事はあまり覚えていない

きっと外に飛び出して近所の人に助けでも求めたのだろう

気づいた時には父が帰って来ていて、警察官が慌ただしく動いていた

兄と母がいた場所には血痕だけが残っていて

その後、二人の姿を見たのはお葬式の時が最後だ

  

"兄による無理心中"事件はその方向で片付けられた

動機は不明という事になっている

 

俺が見つけた兄の遺書は、警察には見られていなかった

記憶にない放心状態の中で無意識に隠したらしい

何故隠したのかは俺にも分からない

そしてその遺書は、今も俺の手元にある

 

✱✱✱

 

当時、七歳だった俺は今年十五歳になった

事件から八年が経過した今でも

時折あの日を夢に見る

 

今は父とアパートで二人暮らしをしている

元々は一軒家だったけれど、住み続けるには辛すぎたために引っ越した

 

父はあの日から仕事漬けの毎日を送るようになった

"働いていると気が紛れるんだ"といつも疲れた顔で話す

お酒やギャンブルに逃げなかったのは、まだ子供の俺がいたからかもしれない

 

斯く言う俺も十四歳で芸能の仕事を始めた

学校で退屈な授業を繰り返し受けたところで気は紛れない

慌ただしくて、賑やかで、休む暇もないような仕事が良かった

最初は子役事務に入ってノウハウを学んで

セルフプロデュースで活動するようになったのが十五歳の誕生日の後

 

次の仕事で自分が参加する雑誌のバックナンバーをペラペラと捲っていたその時

一人の男に目が止まった

 

黒髪に小さな顔、小柄な身体...そして

 

「兄さんと同じ眼...」

 

 

同じと言っても色形じゃない

眼差しだ

憎しみと畏怖が混ざったような眼

 

雑誌の写真だからだろう、その要素は微々たるものだった

でも、じゃあ素のコイツの眼はどうなんだ

兄さんが時折みせたあの眼より

もっと強い憎悪が含まれているんじゃないか

 

「...コイツになら分かるのか?」

 

"生まれてくる種を間違えた"と嘆いた心

"鳥になれますように"と願った最期

兄さんの気持ちが、考えが、苦しみが、本性が

同じ眼をしたコイツになら...

 

 

 

 

 

 

✱続く✱

VanneキャラクターソングVol.2 絆

容赦と安寧

歌:『黒雨』&「咲玖」

詞:mizunowater/恩田 啓夢

曲:染井 シュウ

 

『ゆっくり侵食してゆくような

心地悪い温度に溶かされる前に

距離を置かせて 逃げさせて』

 

「土足で心を踏み躙らないよう

細心の注意を払って

飲み込む言葉はどこに吐けばいい」

 

『例えば 今 何もかも

消え去る時が来たとして

笑う僕を許せないなら

君の望む 居場所はここにはない』

 

『「泣いて叫んで叶うなら

初めからこんな願いなんて

星にも神にも祈らないよ

ねぇ 右にも左にも行けない

八方塞がりな毎日で

どれだけ受け入れたら その安息は手に入るの?」』

 

「凄凄切切 解り合えない

この空洞を何で埋めよう

触れようと手を伸ばしてみても」

 

『許容範囲は極めて狭い

その手をどう切り落とそう

指先一つ掠めていかないで』

 

「例えば 今 心変わりして

その笑顔が本物になっても

疑いそうで怖いんだよ

今更 君を救えない...?」

 

『「駄々をこねる子供みたいに

あれも嫌でこれも嫌いキリがないな

いっそ わかり易く線引きして

八方塞がりな毎日でも

仮初めの安息を手に入れてみようか」』

 

『ゆっくり侵食してゆくような

心地悪い体温に溶かされるように

この感情を焼き切って』

 

「土足で心に踏み込みながら

注意する事も忘れて

この言葉は君に吐き出そうか」

 

『「...なんて出来もしない理想」』

VanneキャラクターソングVol.2 絆

Day and Night

歌:『冬羽』&「襲」

詞:mizunowater/恩田 啓夢

曲:染井 シュウ

 

『今 この手に掴む

好奇心を捨てるなんて出来ない』

 

「また 目を離すと

見えなくなるその姿を追いかけて」

 

『どんなに 遠く突っ走っても

引き戻してくれる

お前の手があれば きっと

ここに 帰ってこられるから』

 

『「明日に後悔だけは残さない

何を得ても 失っても 笑えなきゃ意味が無い

葛藤 迷走 苦悩?抱えないで

今を生きて 夜を待って また朝を迎えたい」』

 

「もし くだらない幻想に

囚われた時は蹴り飛ばしてやろうか」

 

『明るい場所で薄暗い考えに

囚われる事もあるけど

 そんな時は お前の光を目指して歩くよ

だから いつも そこで照らしていてくれ』

 

『「今日も後悔だけは生み出さない

大切なものは手放さずに 走れなきゃ意味が無い

悲しい事があっても振り切って

明日も生きて 朝を待って また夜を越えて行く」』

 

『とめどなく流れる時間は 待ってなんてくれないだろ

遅れた奴から 置いていかれるんだ

準備する暇があるなら進み出したい』

 

『「一生 後悔なんて抱えない

かけがえないものだけ拾って最後まで笑ってやる

困難 災難 不運?知らねぇな!

今を生きて 明日も生きて

夜を待って 朝を迎え

 

強く生きて 走り抜けて

朝と夜を越えて行く」』

静かな夜

強がらなくていいと分かっていても

泣きたい時に泣くって簡単な事が

難しく感じたり やり方を忘れたり

 

「空元気も元気のうちだよ」

それはそうなのかもしれない

だけど そう言われればそれはそれで

どうしようもなく泣きたくなって

叫びたくて途方に暮れる

 

もし 今すぐ自分の心に素直になれたら

泣いて 叫んで 笑って

馬鹿な悩みだったなぁって

思えたりするのかな?

 

こんな静かな夜にはいつも

あなたの言葉を思い出します

「もう頑張らなくていい」

「いっそ倒れてもいいんだよ」

溢れ流れた涙はとめどない

 

長いこと立ち止まっていたせいで

歩き方を忘れてしまったようで

踏み出す足は右?左?どっちからだったっけ

それとも どっちからでも良かったんだっけ

 

いつまでも歩き出せずに困っていると

あなたが不意に後ろから背中を押す

転ばないように咄嗟に踏み出したまま

一歩 また一歩と歩き出せたんだ

 

こんな静かな夜にはいつも

あなたの言葉を思い出します

「立ち止まってもまた歩き出せる」

「何度でも教えてあげるから」

また溢れた涙で溺れそうで

 

強がらなくていいと分かっていても

泣きたい時に泣くって簡単な事が

難しく思えて仕方なかったあの頃の僕は

今あなたを想って泣きじゃくっています

 

もうここにいないあなたへ

もう二度と会えないあなたへ

大丈夫、泣き終わったら歩き出すから

 

さよなら...

『相対』✱弍

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どれくらい経ったのだろう

ふと目を覚ますと 更衣室の床に寝ていた

いや、寝かされていたというべきか

 

そこに結斗の姿はなく ただ傍らには衣装が綺麗に並べられていた

それが僕の着る分だと理解して勢いよく起き上がる

 

撮影は?どうなった?

あれからスタッフはここに入ったの?

精密ドライバーは...

 

混乱した頭で何とか物事に優先順位を付ける

まず凶器のドライバーを探して隠さないと

それから着替えて外に出てみよう

それほど時間が経っていないのなら ここにいない結斗は先に着替えて外へ出たのだろう

スタッフがここに入って来ないようにしてくれている事を願う

 

「何を...言ったんだろう」

 

ドライバーを探しながら 意識が途絶える直前の出来事を思い返した

『お前は人間が嫌いなんじゃなくてさ

人間が──だろ?』

何度繰り返しても肝心な所が思い出せなかった

朦朧として聞き取れなかっただけなのか

聞きたくなくて遮断したのかさえ分からない

 

「...って、ドライバー無いし」

 

さほど広くない更衣室をくまなく探したけれど

ドライバーどころか、血痕ひとつ見当たらなかった

何の為かは分からないけれど結斗が持ち出したんだろう

 

ドライバーを諦めて早々と着替えを済ませた

乱れた髪も整えて靴を履き替える

 

ドアノブに手をかけたところで深呼吸をして

まだ少し残る気持ち悪さを落ち着かせてから外に出た

 

✱✱✱

 

「あ!黒雨さん入りまーす!」

 

更衣室のすぐ側で待っていたスタッフが声を上げると 他のスタッフがコチラを見る

 

「よろしくお願いしまーす!」「黒雨さん髪ちょっとセットしますねー」「今日の衣装は水OKなんで海入っての撮影も出来ますけど、あんまり無理しなくていいからね」

 

ヘアメイクやカメラマン、衣装さんにアシスタント

様々なスタッフに声をかけられながら砂浜を歩いて行く...と

 

「くーろあーめさんっ!」

 

背後から馴れ馴れしく姿を現した彼の笑顔には

もうあの冷たさは感じられなかった

最初の演技よりも完璧な演技で、子供らしく無邪気な空気を醸し出していた

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絆創膏はスカーフで上手く隠されていて 僕としてもホッとした

撮影直前のモデルに傷を付けるなんて...例え結斗が自らした事だとしても気分が良いとは言えない

 

「ユウトくん...よろしくね」

「はい!よろしくお願いします!」

 

僕もいつものように笑顔を作り 何事も無かったかのように撮影を始めた

 

目線を、手を、背中を...仲良く合わせながらカメラのシャッター音を聴く

正直この瞬間にも吐き気が止まらないし ハッキリ言って逃げ出したい

だけど、これでもプロとして仕事をしているのだ

レンズ越しのカメラマンの目を騙すのは もはや僕の特技だった

 

例えば雑誌の読者が僕らの写真を見て

プライベートでも仲が良いのではないかと勘違いするほどの演技をする事も容易で...

 

「精密ドライバー、記念に貰っておくぜ黒雨」

 

撮影も終盤に差し掛かった頃

波打ち際で戯れながら 小声で耳打ちされる

 

「記念って...な 、ん...!」

 

突然の事に気を取られたところを押されて転んだ

上には結斗が被さっている

押し倒されるとは...不覚

 

「いちいち距離が近いよ 君

僕そういう趣味ないから、やめて」

 

少し離れた場所にいたスタッフ達が「大丈夫ですかー?!」などと声を上げている

カメラマンもファインダーから目を外し、こちらを心配して首を伸ばしていた

 

「ほら、早く起き上がらないと不審に思われるよ

本性バレたら困るんでしょ?ユウト...」

 

軽い舌打ちをして体を起こし、僕に手を差し伸べて笑った

スタッフの前で その手を払うわけにもいかず渋々手を取ると

少し乱暴に引き上げられた

 

「言っとくけど、逃がさねぇから

お前には俺を殺してもらう...必ずな」

 

水飛沫と音に紛れて 冷たい声が降る

一体、何故こんな事になったのだろう

結斗はどこで僕の人間嫌いを知って

どういうつもりで殺されようとしているのか

 

そして、もし結斗の言った通り 僕が人間を嫌いな訳じゃないのなら

この吐き気の原因はどこにあるのだろう

考えても答えは出ないことは分かっていた

「人間が殺したいほど嫌い」

この気持ちは物心付いた時から変わらないのだから

 

✱✱✱

 

撮影は順調に進み1時間ちょっとで終わった

その間なにかと僕に触れようとする結斗にイライラしたけど、こんなくだらない遊びは今日限りだ

 

逃がさない...なんて、逃げるに決まってる

もう仕事の話を持って来ても関係ない

心証が悪くなろうがなんだろうが断る

 

スタッフに軽く挨拶をしてさっさと更衣室に向かった

後ろでは結斗がカメラマンと楽しそうに話している

あんな本性を隠してよくやる...僕は必要以上に人と関わりたくないから 演技をするのは仕事の間だけだ

仕事が終われば足早に帰る

たまに顔見知りのスタッフから打ち上げに誘われるけど、適当に理由を付けては逃げている

 

そこまで考えてふと違和感を感じた

この違和感に関して深く考えたくないような、でもハッキリさせたい気分だった

 

果たして逃げるとは どんな意味を持つ言葉だっただろう

そこに生まれている心理は どんなものが相応しいんだっけ

僕は自然を壊すくせに直せない

直そうとしてさらに壊していく人が憎い

だから消えて欲しい、関わりたくない

いつも逃げたり遠ざけることに必死だ

 

だけど、憎いと嫌いは微妙に違う

じゃあ僕が人を嫌いなのは

 

どうして...?

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『お前は人間が嫌いなんじゃなくてさ

 

人間が"怖い"んだろ?』

 

心にかけていた鍵が、壊れる音がした 

 

 

 

 

 

 

✱続く✱